「知らない間に便利な機能が使えるように」を目指す

これまでは無償の試験サービスだったが、7月からは有償の商用サービスになる。ユーザーの期待に応えられるか。

 2月のサービス発表会では、田中(孝司社長)が「年内に1000局」という目標を掲げたが、2月時点で500局を開局させている。今のところ500局からあまり増やしていないが、開局準備は順次進めており、7月1日の本サービスに向けて開局させていく。商用サービス開始に向けて300億円の増資も実施したところで、そのほとんどを基地局整備に割り当てていく方針だ。とりわけ東京23区、名古屋、大阪のネットワーク整備は必達目標(コミットメント)だ。ユーザーの皆さんにも、2週間に1回くらいモバイルWiMAXの電波が届いているか試してほしい。試験サービスではつながらなかった場所も、つながるようになったことを体験してもらえると思う。

 商用サービスの開始当初、実際に試してみたいという人は、やはりイノベーターだと考えている。こうしたユーザー層では、割り切っている方が多いとみている。実際、試験サービスでも5000人に端末を配布し、30人ほどに「意見交換会」として話を聞いて実感した。こうした方々は、当社のサービスが発展途上であるという点をポジティブに捉えてくれる。不満を持つ人はさほど多くないという印象だ。

「カバーエリアはどんどん広がっている」と語る加固氏

商用サービスの開始以降、端末をどのように販売し、加入者を増やしていくのか。

 7月に有償サービスが始まれば、ユーザーはUQ WiMAXへの加入契約前に様子を見ることが可能になる。7月から9月ころにかけて、市販のメーカー製パソコンの多くにモバイルWiMAXモジュールが内蔵されるだろう。これを購入して日々使っていると、いつの間にかモバイルWiMAXの電波が入ってきた、じゃあ契約しようかな、という流れも出てくるだろう。

 モバイルWiMAX内蔵パソコンは、携帯電話業界で言うところの“白ロム”の状態で市販され、OTA(Over the Air)方式でユーザーがパソコンの画面からUQ WiMAXに加入契約できる。現在オンラインサインアップ用のWebサイトを準備しており、そこではUQ WiMAXだけでなく、プロバイダーなどのMVNO(Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)のサービスも並列で提示し、ユーザーが契約先の事業者を選べるようにする。3Gの通信モジュールを内蔵したパソコンは、購入や契約が面倒であったが、そうした面倒臭さはないだろう。もちろん、モバイルWiMAX内蔵パソコンは3Gのデータカードのような“2年縛り”もないし、回線契約も、当社の自社サービスとして提供するUQ WiMAXについては2年縛りを設けない。

 また当社は、UQ WiMAXではなく、モバイルWiMAXの普及に努めたいと考えている。通信事業者と限られた対応端末だけを囲い込むのではなく、幅広いメーカーの製品を使えるオープンなプラットフォーム戦略を描いているからだ。モバイルWiMAXとは何ぞや、というところから、普及活動をしていかないといけない。いずれはパソコンだけでなく、家電製品までモバイルWiMAXの対応機器を広げていきたい。単純にパソコン用のデータカードだけなら3Gと同じであり、差異化が必要だ。将来的には、パソコン以外の領域でどれだけモバイルWiMAXモジュールを広められるかが重要になるだろう。

メーカー製パソコンでは、3Gの通信モジュールとセット販売する代わりにパソコンの本体価格を大幅に割り引く、いわゆる“100円PC”が盛んだ。そんな状況下で、製品単価の上昇に直結するモバイルWiMAXモジュールの内蔵を促進するのは厳しいのではないか。

 100円PCはしないし、したくない。オープンな手法ではないと考えている。購入時の価格が安いだけで、最終的にユーザーに負担いただくことになる。加えて、100円PCはネットブックであり、本来のパソコンと同じ機能は持ち合わせていない。果たしてそれが、ユーザーの求めたものなのか。安さばかりを追求するのが、ユーザーのためになっているだろうか。

 当社は、パソコンのこれ以上の単価下落を抑えたいと思っている。パソコンメーカーも、同じ考えだろう。歯止めを掛けるには、テクノロジーでいかにユーザーの方々に満足いただくか。それを追求するしかない。それができなければ、パソコンはなくなるだろう。

 当社が目指すのは、「普通にパソコンを買っただけなのに、知らない間に便利な機能が入っている」というもの。最初は15型クラスのスタンダードノートPCで構わないし、接続場所も自宅でいい。場所に縛られずに高速なインターネット接続環境が使える、ということをユーザーに認識してもらえれば、いずれ外へ持ち出してみようという気になるはず。そういう世界が実現できれば、将来的にパソコンの使い方を大きく変えていく原動力になるだろう。

 また、当社がインフラ整備にこれだけ注力するのは、リッチなコンテンツを流すため。現在の3GではYouTubeなどの動画を視聴するのは難しいが、モバイルWiMAXならば可能になる。それだけでも意味のあることだと考えている。パソコンの使い方を変革するためにも、ADSLに匹敵する高速データ通信を外で使えるようにすることは当社の責務だ。

 そうした観点からも、いかにリッチコンテンツを高速で転送できても、受信するパソコンがそれを処理するだけの性能を持たなければ意味がないと考えている。