[後編]ワンセグやFeliCa対応を検討,携帯に必要な機能は国によって異なる

今後,端末に塔載していきたい機能やテクノロジーは何か。

 まず,HTCにとってのテクノロジーとは,いかにして人の生活を便利にするかというものだ。ただ,そこには言語や文化の違いが現れてくる。それぞれの市場における,ユーザーの異なるライフスタイルと要件を学ぶことが大切になる。

 例えば電車での通勤/通学が多い日本では,携帯電話がワンセグやFeliCaを搭載している。一方,米国では自動車通勤が中心だ。米国人に「携帯電話でテレビを見たいか」,「乗車券の機能を付けたいか」と聞くと,“何をバカなことを”と言われてしまう。車を運転しながらテレビは見られない,というわけだ。

 米国人が欲しいのはBluetooth経由で車にリンクして,車のスピーカを使うとか,ボイス・アクティベーション(音声応答)といった機能になる。

 つまり,人が異なれば要件も異なる。キーボードが欲しい人もいれば,タッチ・スクリーンが良いという人もいる。いろいろなユーザーの要求に合わせて多様な製品を出したい。

ワンセグやFeliCaへの対応予定は。

 ちょうど検討しているところだが,今の段階だとOSに関する部分で課題が残っている。

 ウィルコムのWindows Mobile端末を見ていただけると分かるが,ワンセグが付いた製品はあるものの録画ができない。この点を解決しようとマイクロソフトと開発を進めているところだ。

 FeliCaは非常に高いセキュリティを要するテクノロジーなので,オープン・プラットフォームの機器に内蔵する場合にどうなるのかを検証しなければならない。このように,従来型の専用プラットフォームの携帯電話とオープン・プラットフォームの携帯電話を比べると,それぞれに利点と欠点がある。

Android端末の日本での発売予定は。2009年に具体的な計画はあるのか。

 これは検討中だ。Android端末を日本で最初に提供するメーカーになろうと努力している。できるだけ早く提供したい。

最近の携帯電話メーカーは製造を外部に委託している場合が多い。HTCはどうか。

 自社で工場を持っており,製造部分をアウトソーシングしていない。分解すると分かるが,HTCの端末の内部は非常に密度が高い。できるだけ多くの機能を狭い領域に詰め込もうとしているからだ。これは他社に製造を委託しているメーカーではなかなかできないことだろう。

 台湾の桃園市にある製造工場は研究開発部門と隣同士だ。何か品質で困ったことがあったらすぐに修正できる密接な管理体制を取っている。

3.9世代(3.9G)携帯電話と呼ばれるLTE(long term evolution)の商用化が近付いている。LTEによって携帯電話の使い方はどう変わると思うか。

デビッド・コウ氏
写真:丸毛 透

 高速になるほど一定時間内に伝送できる情報量が増えるので,表現力が豊かになる。例えば色だと昔は数千色だったのが今は6万5000色。サイズも昔はQVGA(320×240ピクセル)だったが,今はWVGA(480×800ピクセル)が使える時代に入っている。

 さらにLTEになると,携帯電話の画面でハイビジョン・テレビと同じ品質のクリアな映像を見られる。「Googleストリートビュー」では,今はいちいち写真を撮ってデータベースにため込んだものを表示する形を取っている。スピードが上がれば,人工衛星と直接リンクして,リアルタイムの画像を流せるようになるだろう。

WiMAXへの対応はどうか。HTCはロシアでWiMAX端末を発表ししている。

 今の時点で言えることは何もない。ただロシアの例からも分かっていただけると思うが,HTCは常に最新のテクノロジーを提供できるように努力している。

HTCは最終的にはどのような企業を目指しているのか。ライバルは例えば米アップルか。

 HTCは着実な会社だ。アップルのような大規模な会社になろうとは考えていない。私たちが今できることに焦点を絞り,得意とするところを一生懸命やる。

 とにかく最新のテクノロジーを提供すること,通信事業者としっかりとしたパートナシップを組むこと,そして株主に対してできる限りの利益をもたらすことが私たちの目指すところだ。他社の場合だと様々な製品ラインがあり,大規模に事業を展開しているが,HTCはとにかくテクノロジーと製品に集中している。Windows Mobileと言えばHTC,Androidと言えばHTC,と言われることを目指している。

 他のメーカーのように広告に多大な投資をすることはない。製品が自ら語ってくれるので,わざわざ広告を打つ必要はないと考える。

 実のところ,HTCはリソースのほとんどを研究開発に注ぎ込んでいる。Windows Mobileに関しては全世界で一番大きな研究開発チームを持っているはずだ。Android端末も私たちが世界で一番先に発売した。とにかく研究開発に毎年多大な投資をしている。これがHTCの信条だと思って欲しい。

HTC Nippon 代表取締役社長
デビッド・コウ氏
2004年にHTCに入社。HTCアメリカのカナダ担当ディレクターを経て,2008年6月にHTC Nippon代表取締役社長に就任。IT・通信業界で20年に及ぶ豊富な国際経験を持つ。担当した業務は製造,サービス,オペレーション,財務,販売,マーケティングと多岐にわたる。南カリフォルニア大学で電気工学修士号を取得。カリフォルニア州立工科大学ポモナ校で電気工学・コンピュータサイエンスの理学士号を取得。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2008年12月18日)

出典:日経コミュニケーション 2009年2月1日号 pp.52-53
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