Webブラウザだけで使えるオフィス・アプリケーション「Zoho」シリーズを提供する米アドベントネット。ワープロや表計算をはじめ,約20種類ものアプリケーションを提供中だ。同社のスリダー・ベムブCEOは「デスクトップ・アプリケーションは今後消えてしまう」と言い切る。

(聞き手は中道 理=日経コミュニケーション


米アドベントネットのCEOであるスリダー・ベムブ氏
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Zohoのビジネス・モデルは。

 Webブラウザで利用できるアプリケーションをビジネス・ユーザーに月額料金で提供することだ。個人ユーザーには無償で提供している。現在120万のユーザーがいる。

 アプリケーションとしては,メール,エディタ,スプレッド・シート,スライドショー,プロジェクト・マネージメント,データベースなど業務に必要なものを一通りそろえてある。ユーザーが必要とするアプリケーションがあれば,随時追加していく。既存のアプリケーションも永続的に機能強化していく。

なぜ,Webでアプリケーションを提供しているのか。

 インターネットでアプリケーションを提供する,いわゆるクラウド・モデルが,デスクトップ・アプリケーションに比べて優れているからだ。

 まずはデータとロジックがすべてネット上のサーバーに格納されるので,同じアプリケーションとデータをどこからでも利用できること。しかもZohoの場合はデータとロジックが完全に分離されているので,同じデータを様々なアプリケーションから利用できる。例えば,データベースに格納されたデータをエディタから利用したり,スプレッドシートに取り込んだりできる。

 次に他のユーザーとのデータ共有が容易なことだ。例えば,日本の社員の仕事をインドのオフィスで引き継ぐことができる。

 最後が利用料金が安いこと。複数の人で同じシステムを共有できるから,CD-ROM配布の費用がかからない。インストールの手間やシステム運用コストも抑えられる。

 こうしたメリットを考えると,従来のデスクトップ・アプリケーションに勝ち目はない。5年後なのか,10年後なのかは分からないが,将来はすべてのアプリケーションはクラウド型になっていくだろう。

 現在,世界規模で経済状況が悪化している。この状況は,高価なデスクトップ・アプリケーションから安くて使い勝手のいいWebアプリケーションへのシフトを加速させると思っている。

デスクトップ・アプリケーションの良さはオフラインで使えることだ。クラウド型のアプリケーションはインターネットへの接続が必要でオフラインでは使えない。

 オフラインの問題はキャッシュを使うことで解決する。具体的には,サーバーのロジックやデータをローカルにキャッシュする「Gears」に対応させていく。現在提供しているアプリケーションは,可能な限りGearsに対応させる計画だ。

 一方で,無線通信の発達により,インターネットに高速かつ常時接続できる環境が整い始めている。私はZohoのアプリケーションだけで仕事をしているうが,不便を感じたことはない。

Webブラウザだと作成できるアプリケーションに限界があるのではないか。

 確かに,現時点ではWebブラウザに限界があるのは確かだ。例えば,動画の再生でFlashなどWebブラウザに実装されていないプログラムに頼らざる得ない。しかし,HTMLの次のバージョン(HTML5)では,映像のタグが入り,Webブラウザの中に動画再生機能が入ってくる。必要な機能はHTMLとJavaScriptに取り込まれ,Webブラウザに含まれていない機能に頼る場面は減っていく。

 Zohoでは,Webブラウザの種類によらず,すべてのアプリケーションが動作するように考慮して,標準の技術だけを使う方針を採っている。

携帯電話への取り組みはどうか。

 既にiPhoneに最適化したWebアプリケーションを作っている。BlackBerryに最適化したWebアプリケーションも今後提供する予定だ。ただし,iモードのような日本の携帯電話に最適化したアプリケーションは今のところ考えていない。