【前編】ユーザー数は3000万を超える,設備増強の効率化こそ成長の鍵

1000万ユーザーを超えたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の「mixi」(ミクシィ)。2004年2月の立ち上げからわずか3年余で達成し,今もなおユーザー数を伸ばしている。約6割がアクティブ・ユーザーで,月間の利用時間は3時間超。コミュニケーションのインフラをmixiの理念に掲げる笠原社長に,成長を支える設計思想を聞いた。

国内最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)となった「mixi」運営の基本方針を聞きたい。

 コミュニケーションの“場”を提供するのが基本的な方針だ。ユーザーに対してどのような機能を用意すれば友人,知人とコミュニケーションしやすくなるのか,自分が興味・関心を持っていることについていかに簡単に情報収集できる環境を用意できるか,といったことを考える作業に没頭している。

 mixiの中で情報を発信するのはあくまでユーザーである。我々がコンテンツを作ってユーザーに提供するのではない。潜在的な知人・友人の存在を知らせたり,興味の対象をリコメンドしたりすること。これがmixiの役割だと考えている。

この5月にmixiのユーザー数は1000万の大台を超えた。今後どこまで伸びると見ているのか。

 2000万から3000万までは伸びていくと見ている。例えば今,mixiのユーザーを見てみると20代前半が一番多い。この年代に限れば,年代別人口のおよそ3分の1がmixiに入っている。

 携帯電話の普及率を見ると,コミュニケーションのインフラとして定着した場合は20代で90%台に届くだろう。ほかの年代にも広く浸透していけば, 3000万以上になる可能性はある。実際,韓国のSNS最大手「サイワールド」では,20代利用率が90%に達していると聞いている。

ユーザー数が増えるに従い,利用者はmixiにコミュニケーション・インフラとして止まらないシステムを期待するようになる。止まらないシステムにするために,どのような対策を講じているか。

笠原 健治(かさはら・けんじ)氏
撮影:山田 愼二

 現時点でサーバーの数は1000,2000のオーダーとなっている。1日1台,少なくとも数日に1台は必ず壊れる。だから,どこのサーバーが壊れても動き続けることが基本になる。サーバーだけでなく,データ・センターとネットワークも,いずれ壊れることを前提に設計している。

 例えばデータ・センターについては,複数の企業,複数の場所を借りている。サーバー相互の冗長化はもちろん,データ・センター間という大きな単位でも冗長化するのがポリシーだ。

 運用中のサービスについては負荷の推移がある程度見込みが立つため,それをもとに,早め早めに設備を増強している。mixiで言うと,だいたい夜の0時がピークになる。午後10時ぐらいから午前0時にかけて上がっていき,0時を境に午前2時ぐらいまでかけて下がってくる。そのピーク時の処理負荷に一定の倍数をかけた負荷にでも耐えられる余裕を持たせている。

新しいサービスを追加すると,その部分だけ新たな負荷が生じることになる。その負荷はどうやって見積もるのか。

 新サービスについては,なかなか予測しづらい。最近,有料会員の「プレミアムユーザー」だけが投稿できる動画サービスを追加した※。この場合は,プレミアムユーザーが今何万人いて,どのぐらい投稿本数があって,どのぐらいストレージが必要で,どのぐらい回線を食うか,という基礎データを把握した状況で実施した。

 とはいえ何かイレギュラーな事象が起こってアクセスが集中すると,予測を超えることがある。常に設計を見直しながら,データのたまり方の特徴はどうか,より効率的な負荷分散の仕方は何か,といったことを考えていく。なるべくシステムを単純な形に保っておけば,負荷とデータ量に応じてサーバーを追加していくだけで済む。設備増強のコスト・パフォーマンスを継続的に高める作業が重要だ。

※編集注:2007年7月13日付けで全ユーザーに開放。

ネットワークの増強も継続的に続けている。通信サービスの大口顧客として,今のサービスに不満を感じることはないか。

 通信サービスへの要望は大きく三つある。料金,セキュリティ,そして納期である。

 セキュリティでは,DDoS(分散サービス妨害)攻撃にさらされることがあるので,付加的なサービスとしてDDoSを水際で防ぐサービスがあれば助かる。

 納期については,欲しいときに欲しいだけの帯域を得られないことがある。大容量の回線を引こうとすると,それなりの時間がかかってしまう。オンデマンドである必要はないが,納期は早ければ早いほどありがたい。

>>後編 

ミクシィ 社長
笠原 健治(かさはら・けんじ)氏
1975年12月6日生まれ。東京大学経済学部経営学科卒業。IT系求人情報サイト「Find Job!」を開設,99年に法人化。2004年2月に国内初のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「mixi(ミクシィ)」の運営を開始する。2006年2月にミクシィに社名を変更。同年9月に東証マザーズに上場を果たす。

(聞き手は,林 哲史=日経コミュニケーション編集長,取材日:2007年5月31日)

出典:日経コミュニケーション 2007年7月1日号 67ページより
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