社内ベンチャーから9年で上場,SIerのWebビジネスを支援する

NTTデータ イントラマートは、Webシステム基盤である「intra-mart」(イントラマート)を開発・販売するパッケージベンダーだ。中山社長がNTTデータの社内ベンチャー制度を活用して事業をスタート。2002年に株式会社化し、この6月に東証マザーズに上場した。国産ミドルウエアパッケージ・ベンダーの上場は珍しい。中山社長に、SIerとの関係作りなど今後の戦略を聞く。

ITバブル崩壊後に急成長

会社設立の経緯を聞かせてください。

 私は92年にNTTデータに入社し、ERP(基幹業務システム)ソフトのSCAWの開発・販売部門に配属されました。SIとは逆に、マーケットニーズに合ったものを自分たちで作り上げ、それを大量に販売していくビジネスです。その後、98年ころにユーザー企業にイントラネットが導入され始め、この市場を狙ってWebベースで業務システムを作ったらいいのではないかと思い始めました。

 しかしWebシステムは、スピーディーな開発と低コストが求められます。これを大組織の中でやるのは難しい面が多く、それなら自分でやってしまえと、98年に社内ベンチャー制度に応募したのです。

 企画が通ったのはいいが、社内ベンチャーですから予算は少ない。でも自分たちでやるべきところに資源を集中し、あとはオープンソースの活用やさまざまな部品をコンポーネントとして利用したほうが、結局はスピーディーかつ低コスト。そこで我々は、システム基盤に特化することにしました。

 社内ベンチャーとしては第2号だったのですが、株式会社化したのは当社が初めてです。初年度から黒字になったので、これはいけると。当初はNTTデータが7割、私自身が3割の出資でスタートしました。上場後の現在は、NTTデータが52~53%、私が16%程度の出資比率になっています。

社員数が50人弱と聞いています。販売パートナとの関係が重要に思えますが。

 まさにそうです。intra-martは約1700社のユーザー企業に使っていただいていますが、これはパートナーのおかげです。当社のパートナー企業は大半がSIerで、現在83社。NTTデータの関連会社も複数ありますが、売り上げに占める割合は25%程度しかありません。

 会社設立の前からSIerを回り始め、初年度で20社以上の企業にパートナーになってもらいました。出だしは非常に順調だったのですが、数年前に売り上げの年間伸び率が十数%まで落ちてしまった。ちょうどITバブルが崩壊した時期で、今から思えばあれが当社の分岐点になりました。

 なぜなら多くのSIerが厳しい情況に追い込まれ、「これまでのスクラッチ型の開発手法で、本当にユーザー企業のニーズを満たせるのか」と思い始めたからです。とはいえ年商100億円から500億円の中堅SIerが、自社でコンポーネントをそろえたりオープンソースを検証したりという作業は荷が重い。ならばintra-martを使えばいいじゃないか、という機運が生まれ、これが当社にとって追い風になりました。売り上げが大きく伸び始めたのもこのころです。

 そう思えば当社は、単にintra-martのライセンスをパートナーに販売するだけでなく、中堅SIerに代わって最新のWebシステム基盤を開発するという役割を担っているとも思います。

写真●中山 義人
撮影:柳生 貴也

パートナーとのビジネスはどういうものですか。

 核となるのはintra-martのライセンス販売とシステム開発です。ただしシステム開発といっても、基本的にはユーザー企業向けのシステムを我々が直接請け負うわけではありません。パートナーがintra-martを使ってアプリケーションなどを作っていく中で、領域的・技術的に難しい部分を代わりに開発してパートナーに納める作業です。

 例えば最近ですと、SAPのERPとリアルタイムにデータを連携させるフロントシステムの開発案件がありました。しかし請け負ったパートナーにとっては、バッチ連携の経験はあるが、さすがにリアルタイムの連携システムを作ったことはない。そこで当社の開発陣が、代わって構築したわけです。

 当社が重要と思っているのは、2回目以降はそのパートナーが自分で開発できるように、仕様を全部公開してしまうこと。我々の開発はintra-martを普及させて、同時にパートナーにより付加価値のあるビジネスを提供してもらうための手助けという位置付けです。

 パートナーとの関係でもう一つ特徴的なのは、当社は今後の開発計画や営業の方針などをすべてオープンにしていることです。もともとオープンソースを組み込んでいますし、ビジネスもオープンにするのが当然だという考えからです。

 パートナーとは頻繁に議論しています。お客さんの所に行く前に寄ってもらったり、共同で提案企画を練ったりなどはしょっちゅうです。パートナーの方々は常駐して一緒に開発していたりするので、いつも当社の社員の倍以上、100人近い人がここにいます。

 先ほど、パートナーはほとんどSIerと言いましたが、大手ユーザー企業の関連会社、それもソフトを外販していない純粋なシステム子会社との契約が増えてきました。最近ではトヨタ自動車の販売会社であり、内部にシステム子会社を持つトヨタアドミニスタや、全日空システム企画ですね。これは、本社でいれたWebシステム基盤をグループ全体でシェアしながら活用していこうとする動きの一環です。Webシステムなので、多数で使えば使うほどコストメリットが拡大しますから。

Webシステム基盤の市場規模をどう見ていますか。

 当社の2007年3月期の売り上げ20億円のうち、ざっと10億円がライセンス収入です。これはあまり公表していないのですが、このライセンスフィーは平均すると、パートナーがお客様に提案するSIの総額の5%程度。逆算すれば、市場規模は200億円ぐらいになります。今は年率40%でライセンス収入が伸びているので、SI金額にすれば今年は280億円になる。つまり昨年度より80億円多くのシステム開発が発生するわけで、これを確実にやっていただけるパートナーの確保が重要になってきます。

 今年度の方針として、中堅企業市場に強い営業力を持つパートナーの拡充を計画しているのですが、これと並行してシステム開発を中心としたパートナーも増やしたいと考えています。両タイプのパートナーの増強で、パートナー数は九十数社になる見込みです。

SOA(サービス指向アークテクチャ)にはどう取り組みますか。

 我々はソフトウエアのコンポーネント化からスタートしており、SOAはその延長にあるものと考えています。今は同じマシン上にコンポーネントが乗っていますが、SOA化すればネット上のどこにあってもいい。当社は「Open & Easy」をキーワードにしているので、SOAもオープンでカジュアルな感覚で組み立てられるようにしたい。これに向け、intra-martの機能強化を計画しています。

 SOAの概念にあるのは「サービス」の連携なので、ある処理をしようとすると、さまざまなサービスを連携していくことになる。つまり、現在以上にワークフローの機能が重要になります。現時点では例えば人事総務系の申請や承認に関するワークフローなどがありますが、SOA化が進めば業務全体を対象にしたワークフローが必要になる。そして、このワークフローこそ当社の強みが生かせると確信しています。

 なぜかといえば、日本企業の業務は非常に細かく、イレギュラー処理が非常に多い。我々はこれらの処理に耐えられるよう、機能を作りこんできました。この部分では、海外の製品よりも確実にアドバンテージを持っています。多くの有力なソフトウエアベンダーがSOAを唱えていますが、当社は自分たちのグループウエアや営業支援、販売管理といったアプリケーションをサービスに分解し、どんどんリリースしていく計画です。

NTTデータ イントラマート代表取締役社長
中山 義人(なかやま・よしひと)氏
1966年6月生。92年3月に東京大学大学院修士課程(生命情報工学専攻)卒、同年4月にNTTデータ通信(現・NTTデータ)入社、SIS推進本部に所属。2000年2月にNTTデータ イントラマートを設立し、代表取締役常務。2001年に同社代表取締役社長に就任。趣味はバラの栽培。
出典:日経ソリューションビジネス 2007年6月30日号 34ページより
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