なぜ企業にはIT部門が一つしかないのか。考えてみれば不思議な話である。「何を言っているの。同じ役割を担う組織を複数置くのはムダでしょ」と呆れる人もいるかと思うが、よく考えてほしい。本当だろうか。むしろ、たった一つのIT部門に複数の役割を担わせようとしているところに、今の“IT部門の失敗”の原因があるのではないか。

 IT部門の役割を情報システムの開発・運用・管理と定義すれば、確かにIT部門は企業に一つあれば済む。だが、この定義が実はおかしい。言うまでもなく、システムは経営やビジネスのためのツールである。だからこの定義によると、IT部門は“道具係”ということになる。

 本来、経営機能としてのIT部門は、情報化を通じて業務の効率化やガバナンスの徹底といったマネジメントを支える役割を担っていたはずだ。だが、多くの企業でマネジメント支援のための基幹系システムの構築が片付いてしまったこともあり、今やIT部門はその基幹系システムのお守りが中核業務となってしまった。まさに道具係と化してしまったわけだ。

 ただIT部門は道具係としても一流ではない。基幹系システムという道具を維持することに精一杯で、事業部門からの道具追加要請に応えることができない。愛想を尽かした事業部門は、IT部門を無視して外部のクラウドサービスなどを利用するようになる。その結果、「シャドーIT」「ステルスクラウド」といったガバナンスの利かないIT活用が社内に蔓延することになった。

 もちろん、IT部門が単なる道具係でよいとする企業も多い。ただその場合、同じ道具係ならITベンダーのほうが優秀なので、アウトソーシングという選択肢が生じる。一方、グローバル経営などを推進するうえで、それではマズイというならば、IT部門は本来のマネジメント支援の役割を取り戻さなければならない。

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