その情報が、事実を指しているのか、あくまで仮定なのかも分かっている。ここまでくれば、かなりゴール・戦略の根拠となる情報がそろっているかどうかが見えてきたのではないだろうか。では最後の仕上げにかかろう。

 このように分類して整理してみると、個々の情報がその分類のなかで「根拠として採用したほうがよいのか」それとも「根拠としては関係ないものなのか」がはっきり分かる。さらに「戦略を作るには、あまりにも顧客に関する情報が少なくないか」といった不備も見えてくるので、追加での情報収集が必要かどうかも判断できる。最終的に集めた情報を評価し、はっきり区別していく。残った情報は、かなり品質の高いものになっているはずである。

 以上が「環境の特性化」プロセスにおける3つのポイントだ。読者のなかにも、今までもインタビュー、ワークショップ、アンケートなどで情報を収集し、それを基に様々なフレームワークを使って、戦略を策定するという経験を積んできている方も多いのではないだろうか。

 ゴール設定や戦略策定のフレームワークとしては、手法として、「ゴールツリー(*1)」「SWOT分析(*2)」「3C(*3)」「5Force(*4)」「BSC(*5)」などがよく使われている。システム開発プロジェクトにおける要件定義なら、「ユースケース分析*6」なども使っているだろう。

 これまでは、フレームワークの良さや扱いやすさばかりに注目があつまっていたように感じる。その結果、「新しいフレームワークを使いさえすれば、的確な戦略が導き出せる」といった錯覚に陥るケースもあったのではないだろうか。

 しかし根拠となる情報の質が悪ければ、どんなにすばらしいフレームワークを使っても、的確な戦略など導き出せるわけはない。既存のフレームワークや手法に加えて、GQM+Strategiesという手法をうまく組み合わせて使い、的確なゴール・戦略を表現していくためには、それらの基になる情報の質が重要なのだ。


(*1)ゴールツリー。全体目標を共有しながら大目標から中目標、中目標から小目標とブレークダウンし、ゴールを落とし込んでいく手法
(*2)SWOT分析。企業が戦略立案する際に使われる環境分析手法。組織の「外部環境」から機会(O=opportunities)と脅威(T=threats)、組織が持つ「内部環境」から強み(S=strength)と弱み(W=weaknesses)の4つの視点から環境を分析する手法
(*3)3C。企業活動を分析する手法。「顧客分析(Customer)」「競合分析(Competitor)」「自社分析(Company)」の3つの視点から企業活動を分析する手法
(*4)5Force。新規参入戦略立案などのための業界構造の分析手法。「新規参入の脅威」「代替商品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「業界内競合関係の強さ」の5つの視点から業界構造を分析する。検討すべき5つの項目のことを指すこともある
(*5)BSC。「財務」「顧客」「内部業務プロセス」「学習と成長」の4つの視点で業績管理指標をバランスよく組み合わせ、戦略実行や業績評価を行う手法
(*6)ユースケース分析。システムを利用するヒトを明らかにし、システムを利用して何をするのか(機能的要求)を明らかにする手法

野村典文(のむら のりふみ)
伊藤忠テクノソリューションズ 金融・社会インフラ事業企画室 コンサルティング第1部 部長
大手総合電機メーカーを経て、現勤務先に移り、システムコンサルティングに従事。 主にIT戦略、システム企画・計画、要求分析などの超上流を担当し、現在に至る。最近では「ユーザー企業の情報システム部門が変わらなければ、日本の企業のIT活用は向上しない」との考えに至り、IT部門変革に向けた取り組みに力を入れている。2010年度よりIPA/SECに委員として参画。そこで出会ったGQM+Strategies手法の研究に従事し、今年度からはIPA/SECの連携委員として多くの企業への普及・展開を実施。

井出昌浩(いで まさひろ)
クニエ ITマネジメントサポートグループ シニアマネージャ

製造業、流通業、サービス業など様々な業界のIT戦略やシステム化計画の策定、IT部門の組織改革、ITを活用したビジネスモデル開発などのコンサルティングに従事。2012年度よりIPA/SECに委員として参画。 現在はIPA/SECの連携委員として、GQM+Strategiesの企業・自治体への普及・展開を実施。また、ITコーディネータとして、ITコーディネータ協会のゴール指向IT経営研究会を推進している。

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