「制度が変わるなら、派遣事業は廃業しますよ」――。

 首都圏でシステム開発事業を手掛ける中小ITベンダーA社の浅野社長(仮名)はこう話す(写真)。同社はシステム開発の受託などを手掛ける傍ら、大手ITベンダーからの求めに応じて、技術者派遣も実施している。特定労働者派遣事業の届出もしている。

写真●派遣事業からの撤退を考えるA社の浅野社長(仮名)
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 しかし、厚生労働省がまとめた派遣制度の見直し案に基づく改正労働者派遣法が施行されれば、特定労働者派遣は廃止となり、許認可の取得が必要になる。許認可要件には、「1事業所当たり純資産が2000万円以上あること」といった資産条項が含まれる可能性が高い。体力の乏しい中小企業には厳しい内容である。派遣を主力事業とする中小ITベンダーや派遣事業者は、苦境に追い込まれそうだ。

 幸運なことに、A社において派遣事業が占める割合はさほど大きくない。派遣業撤退による事業への影響は限定的だ。ただし、顧客である大手ITベンダーからの技術者派遣ニーズには応えられなくなる。

 ユーザー企業では、IT業界で散見される多重下請け構造を避ける傾向が強くなりつつある。ITベンダーの管理が複雑になるからだ。元請けのITベンダーが、業務の一部を別のITベンダーに「再委託」することを禁止する条項を契約書に盛り込むこともある。元請けのITベンダーは再委託を避けつつ技術者を確保するため、従来の再委託先である中小ITベンダーに、派遣の形態を要求するわけだ(図1)。

図1●ユーザー企業は、ITベンダーによる「再委託」を嫌う傾向がある
そこで1次請けのITベンダーは、2次請けのITベンダーに対して派遣契約で技術者を派遣してもらい要員を調達したいというニーズが高まっている。ところが派遣制度の見直し後は、体力に劣る中小ITベンダーがその要望に応えられなくなる可能性がある。
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