前回はプロジェクトの本質は「不確実性」にあるということと、不確実性を乗りこなすには三つのアプローチがあるということを説明しました。今回は、三つのアプローチのうち、どれから始めるべきなのかについて、関連するツールや思考の必要性と併せて解説します。

プロジェクトマネジメントの前提

 プロジェクト計画を立てる際に、一般的に最も重要視されるのが、WBS(WorkBreakdown Structure)です(図1)。WBSとは、プロジェクト全体を作業や成果物といった要素で細かく分解した構成図のことです(より詳しく知りたい人は、ITproの連載記事「WBSがプロジェクトとあなたを変える」などを参照してみてください)。

図1●ソフトウエア開発プロジェクトにおけるWBS(Work Breakdown Structure)の例
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 ここで、あるケースを考えてみましょう。新製品を開発するに当たり、ソフトウエアを一新することになりました。新しい技術を採用し、これまでになかった機能を搭載した製品にしなければなりません。市場やユーザーがどのような機能を求めているのかも調査する必要があります。技術的にどこにリスクがあるのかも分かりません。まさに「やってみなければ分からない」という状態です。

 このとき、あなたはすぐにWBSを書き出すことができるでしょうか。過去のプロジェクトの成果物を見ても、参考にできることは限られています。実際にプロジェクトを始めれば、考慮できていなかったことが出てくるのは容易に想像がつきます。

 ドラガン・ミロセビッチ氏は「プロジェクトマネジメント・ツールボックス」という著書の中で、次のように述べています。

 WBSを作成する際、プロジェクト・ワークフローに関する知識は欠かせない。とくにソフトウエア開発プロジェクトのWBSを意味あるものにするには、ソフトウエア開発プロセスを理解している必要がある。

 要するに「プロセス」が分からなければ、機能するWBSを書くことはできないということです。ここにプロジェクトマネジメントの前提があります。プロジェクトマネジメントが機能するためには「プロセスが設計されていること」が必要だということなのです。

プロセス設計に必要な三つのもの

 プロジェクトマネジャーの役割は、「カーナビ」(カーナビゲーションシステム)に例えることができます。カーナビを使う際は、まず「どこに行くのか」という目的地を設定します。そして、目的地までのルートを複数探索します。探索したルートの中から、今回のドライブの目的により合ったもの、リスクの低いものを選びます。すると、カーナビは自動車を走らせている間、ドライバーを適切に「案内」し「誘導」してくれるわけです。

 プロセスを設計することは、カーナビでいえば「ルートを探索する」ことに相当します。目的地である「最終成果物」を生み出すために、どのような「やり方」でプロジェクトを進めて行くのかを探索すること、それがプロセスを設計するということです。ルートがなければ、後に続く「案内」も「誘導」も不可能です。

 プロセスを設計するには、それにあった思考回路と技術(ツール)の両方が必要です。思考回路を持っていても、それを表現する方法がなければ、他人と共有することはできません。ツールだけを手に入れても、そこに思考が伴わなければ、絵としては出来ているように見えても、使いこなすことはできないのです。

 具体的に、プロセス設計に必要なものは三つあります。(1)システム思考、(2)逆算思考、(3)プロセスフローダイアグラム---の三つです。以下、順番に見ていきましょう。

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