ユーザーの要望に応えることと、システムを成長させることは違う。成長につながる改善には、根拠を明確にした改善点の把握が不可欠だ。利用実績との突き合わせや仮説・検証で改善点を掘り起こそう。

 改善サイクルにおいて開発チームは、単にユーザーの要望に応えるという受け身の姿勢ではなく、システムが成長した姿を頭に描いて、それに近付けるべく改善点を能動的に掘り起こす。改善すべき根拠を明確にし、あるべき姿に近付ける対応を考えて、成長をゆるぎないものにしようとする。

 システムのあるべき姿とは、「利用シーンが増えて想定ユーザーが皆使う」「利便性がこの上なく高い」「システムの構築目的を実現している」といったことである。

 従来型の保守でも、ユーザーからの変更要望に応えるためにプログラム改修を行う。改修では、システム担当者や事業責任者などによって適切と判断された要望が実行に移される。判断の基準は多くの場合、コストと改修効果のバランスが適切かどうか(=受け身の対応)であって、システムがあるべき姿に近付いて成長するかどうか(=能動的な対応)ではない。そのため、使いにくい部分に多少手を入れるといった、小手先の改良にとどまる。

 カイゼン型開発によって成長しているシステムでは、どのように改善点が掘り起こされているのか見ていこう。なお、ソーシャルネットワークのmixiの裏側に存在する、改善点を見つけて容易に仮設・検証できる仕組みを別掲記事で紹介する。

<積水化学工業>情報共有基盤:ログと要望を照らし合わす

 改善点を見いだす方法の一つは、改善要望への対応がシステムの成長につながるかどうかを、定量的に把握できる仕組みを築くことである。

 積水化学工業は、2004年にWebメールシステムとして誕生した「Smile」と呼ばれるシステムの改善を続け、グループウエアやポータル機能などを備える情報共有基盤に育て上げている(図1)。このプロジェクトを主導してきた寺嶋一郎氏(コーポレート 情報システムグループ長)は、「グループ全体で2万人いるユーザーの情報共有を促進するツールとなることを目標に、自社開発で拡張してきた」と話す。

 情報共有基盤の利用端末はPCだけではない。進化が顕著な、携帯電話やスマートフォンにも広がる。Web技術も急速に発展している。Smileでは素早い対応で、そうした外部環境の変化に追従している。

図1●開発チームが利用者の声やログを分析して改善点を見つける
積水化学工業は、Webメールをグループウエアやポータル機能などを備える情報基盤に育てた
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