写真1●ドリーム・アーツの山本孝昭社長
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 日中IT企業の新たな協力体制をテーマに中国・大連で行われた「日中合作 成功の方策を探る」と題するパネルディスカッションの後半では、中国のIT人材活用についての議論が沸騰した。

 「最も給与が高く、最もエキサイティングな、大連でナンバーワンの会社を目指す――」。ドリーム・アーツ山本孝昭社長は、パネルディスカッションの席上でこう宣言した(写真1)。

 山本社長は2013年7月から、ドリーム・アーツ大連拠点が採用する新人社員の初任給を、従来の月額3200元(約5万円)から8000元(約12万6000円)へと倍以上に引きあげるという。「中国は人件費が安い」という発想から脱却し、優秀な人材の獲得には投資を惜しまない姿勢だ。

 ドリーム・アーツは早くから、中国の優秀な人材を獲得するために手を打っていた。04年から、復旦大学など有名大学の学生を採用し、中国と日本を往来させながらIT人材として育成していた。さらに07年には、大連に中国初の子会社を立ち上げた。「素晴らしい町、素晴らしい人とともに会社を発展できた」(山本氏)。

 山本氏の目標は、中国人社員だけで、中国向けソフトを開発することだ。「ドリーム・アーツらしい、ユーザーから『ワオ!』といわれるようなソフトを、中国人社員の手で作ってもらう」(山本氏)。

写真2●大連ソフトウエア産業協会の李遠明会長
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 大連ソフトウエア産業協会の李遠明会長によれば、大連に優秀なIT人材が集積しているのは、7年ほど前から大連市が始めた誘致政策の効果が大きいという(写真2)。「賃金が高いほど税金を低くするといった大胆な誘致策で、優秀な人材を大連に集めることができた」(李会長)。

 その一方で李会長は、「日本企業では、中国のアグレッシブな若手人材の気質を活かし切れていない可能性がある」と厳しい指摘をした。

 李会長によれば、中国の20代~30代の気質として「個性豊かに生きたい」「価値を認められたい、アピールしたい」という意欲が非常に強いという。

 これに対して日本企業は、採用面接で「日本語がしゃべれるか」「上司の言うことに従うか」「チームワークをわきまえているか」などを重視する。その分、仕事へのアグレッシブさを持った、尖った人材が集まりにくく、損をしている可能性があるという。「中国企業は『うさぎのようにおとなしい人材は、会社に大きな貢献はしない』というはっきりとした考え方があり、若手をうまく使いこなしている」(李会長)。

 安価なリソースとしての人材活用から、会社を背負う優秀な人材の獲得へ――パネルディスカッションは、日本企業にとっての中国・大連の位置づけが大きく変わりつつあることを印象づけるものだった。