写真1●パネルディスカッションの様子。モデレータは日経BP社の桔梗原富夫執行役員が務めた
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 日中IT企業の「合作」をテーマに中国・大連で2013年6月21日に開催されたセミナーで、中国市場の開拓を目指した協力体制について「日中合作 成功の方策を探る」と題するパネルディスカッションで活発な議論が行われた。

 大連ソフトウエア産業協会の李遠明会長、JBCCホールディングスの石黒和義最高顧問、IIJ グローバル事業本部 グローバル統括部の大導寺牧子プロジェクトマネージャ、ドリーム・アーツの山本孝昭社長がパネリストとして登壇した(写真1)。

 大連では、人件費の高騰と元高(円安)のタブルパンチによって、ITアウトソーシング拠点としての採算性が悪化。大連に拠点を置く日本企業、中国企業は共に、協力の軸足を「アウトソーシング」から「中国市場の開拓」にシフトさせつつある。

 ディスカッションの冒頭で、中国市場における日本のソフトウエアやITサービスの強みは何か、というテーマで議論が進んだ。

写真2●IIJ グローバル事業本部 グローバル統括部の大導寺牧子プロジェクトマネージャ
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写真3●ドリーム・アーツの山本孝昭社長
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 中国市場向けIaaS「IIJ GIO CHINA」を展開するIIJの大導寺プロジェクトマネージャは、「どんなクラウドサービスも、技術ベースはどうしても似通ってしまう。技術という面での差異化は難しい」とした上で、技術を運用する長年の経験やノウハウでは十分に差異化できるとした(写真2)。「世界のどこでもIIJ品質のサービスを受けられることを、サービスの強みにしたい」(大導寺プロジェクトマネージャ)。

 大連に開発拠点を置くドリーム・アーツの山本社長も「すべての技術は急速にコモディティ化しており、技術の先進性で差をつけるのは難しい」と認める。

 そこで、ソフトウエアの使い勝手、心地よさ、感情などのデザイン面で差異化することを狙うという(写真3)。「ロジカルに仕様を満たすソフトウエアではなく、『これ作った人に会ってみたい』といわれるような感性を満たす製品を、中国で作りたい」(山本氏)。

写真4●大連ソフトウエア産業協会の李遠明会長
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 日本企業のソフトウエアの品質は評価する一方、売り方は大いに問題あり、と指摘したのが大連ソフトウエア産業協会の李会長だ(写真4)。「日本のIT企業は、技術レベルに見合うシェアが取れていない。中国では欧米のIT企業のシェアが高く、香港、台湾、シンガポールなどの企業もシェアを伸ばしている」という。

 李氏によれば、米IBMは中国でソフトウエアやITサービスを販売する際、欧米で実証済みのソリューションを移植するのではなく、中国の実情に合わせた新たなソリューションを提案するという。

 「米IT企業が提案するソリューションの多くは、現地の中国人社員が考えたものだ」(李氏)。一方で日本企業の場合、ソフトウエアに絡む経験を日本からそのまま移植してパートナーに伝授させる傾向が強く、これでは中国の文化や商習慣に合わなくなる、と指摘した。

写真5●JBCCホールディングスの石黒和義最高顧問
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 JBCN大連/JBCN上海総裁として中国市場に挑んでいるJBCCホールディングスの石黒最高顧問も「長年中国で仕事をしている私も、中国の文化が分かったとはとても言えない」と話す(写真5)。技術とサービスを分離した上で、サービスについては中国人にオペレーションを託すのが理想的では、と指摘した。

 後編では、中国の優れたIT人材の活かし方についての議論を紹介する。