写真●Jコミ代表である漫画家の赤松健氏
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 タブレット端末の普及とともに、一気に盛り上がるとの見方もあった電子書籍市場だが、サービスもコンテンツも増えてはいるものの、まだ紙の市場を置き換えるほどの存在にはなっていない。そうした中、漫画マニアの注目を浴びるサイトがある。無料で漫画が読める「Jコミ」だ。

 Jコミは「絶版漫画」を提供する。著作権者である漫画家の許諾を得て、紙面をスキャンしてWebサイトで公開している。漫画には広告が挟まれており、その収入は全額、漫画家に渡すという仕組みだ。

 Jコミの主催者である赤松健氏は、週刊少年マガジンで「ラブひな」「魔法先生ネギま!」を連載していた人気漫画家だ。

 記事タイトルに引いた赤松氏の言葉は、今後の電子書籍市場、特に漫画の市場がどうなるかを問いかけたときの回答である。

 「読み放題」は、コンテンツごとにお金を払うのではなく一定の料金を払えばどのコンテンツでも読めるシステムを指す。「無料」は、広告など別の収入の柱を設けて、コンテンツそのものはタダで公開してしまうことだ。

 「現在の電子書籍は、著者やタイトルで買いかどうかを判断して単品で購入するケースが多い。ところが、それでは新しいコンテンツに出会いにくくなるため、新人にお金が入らず育たなくなる。無料も含めた読み放題になると、自分が知らなかったコンテンツに偶然出会う可能性が高くなる。漫画の業界を維持、発展させるためには、新しいコンテンツを読んで面白さに気付いてもらうシステムが不可欠だと思う」

 ほとんどの電子書籍は定額読み放題か無料に集約される、というコメントの背景にはこうした考えがある。ただし、定額読み放題はともかく、Jコミのような無料提供の場合、広告収入だけでまとまった金額を得るのは厳しい。

 その点を解決する一つの手段として、赤松氏は「JコミFANディング」と呼ぶ、熱心なファンに向けたコンテンツの販売を実施している。JコミFANディングは、自由に複製できるPDFファイルとして漫画を提供し、さらに生原稿やサイン、「作家との飲み会」といった特典とセットで限定数を販売するものだ。

 5月27日に終了した第2回JコミFANディングでは、漫画家1人当たり30万~100万円、総額340万円以上を得た。収益は全て漫画家のものだ。

 このように、読者を楽しませつつ、しかもコンテンツの制作者がきちんと利益を得るアイデアを赤松氏は練り続ける。

 2013年末には「これまでにない画期的な企画」を出すという。日本の電子書籍で漫画市場は大きな割合を占める。赤松氏の取り組みを含め、漫画の市場がこれからどう変わっていくのか楽しみだ。


西村 岳史
日経パソコン
 1997年4月に日経パソコンへ配属、その後日経WinPCに9年間在籍し、2012年7月から再び日経パソコン。現在は教育機関向けサービス「日経パソコンEdu」を担当。