スマホやタブレットは物理的なキーボードが備わってないため、キーボード嫌いの社員にITを利用してもらう上では格好の武器になる。自動車向けなどの金型の設計製造を手掛けるツバメックスは、全社員にITインフラを行き渡らせる手段として、スマホファーストを実践した。

 ツバメックスは1982年に日本の自動車業界で初めて3次元CADを導入するなど、製造業の分野でITの導入に積極的に取り組んできた。すべての金型の情報を3次元CADでデジタル化。工場内の生産現場にも随所にPCを配置し、現場の職人が生産管理システムやCAD図面を利用できるようにした。しかし、一部のベテラン職人の中には「キーボードが嫌いで、PCに一切触れようとしない社員がいた」(金型部開発係の荒井善之主任)。

 最近になって製造業向けの“重い”CADデータをiPadやiPhoneで読めるよう、軽量な形式に変換するツールが登場した。そこでツバメックスはCADベンダーから独自にソフト開発キットを入手し、ツールをカスタマイズ。iPadでCADデータを閲覧したり、生産管理に必要なデータを入力したりできる専用アプリを自主開発した(図1)。

図1●システムの活用度を上げるためにタブレットにシフト
ツバメックスは生産管理や図面管理の端末をPCからiPadに変更。キーボードアレルギーのある従業員などが進んで使うようになり、業務効率が上がった。iPadアプリを開発した金型部の荒井善之主任(左)と小林達之氏
[画像のクリックで拡大表示]

 これをキーボード嫌いの叩き上げの職人に見せたところ大いに受けた。金型製作の進捗などは本来、生産管理システムに逐一入力することになっていたが、実際は1日に1回の入力のみという社員もいた。iPad導入により、生産管理システムのデータの精度を上げられると見ている。

 ただし、実際に工場内でiPadを利用するには粉塵防止用のカバーが必要。このカバーの特注品が届き次第、同社はiPadの本格展開を始める予定だ。

出典:日経コンピュータ 2013年3月7日号 p.38
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。