システム開発にかかわる作業をITベンダーに委託する場合、一般的に次の三つのどれかの契約を結ぶ。成果物の責任を負わせる「請負」契約、業務支援などを依頼する「準委任」契約、そして技術者など人材を供給してもらう「派遣」契約、である。

 これらの違いは、なかなか正しく理解されていないのが実情だ。「準委任契約なので完成責任を負っていない。そのため、成果物が完成していなくても、労働に対する対価を(ユーザー企業は)支払う義務がある」といった発言を、ユーザー企業とITベンダーの紛争で聞くことは珍しくない。

 システム開発にかかわる紛争を見ると、請負契約と準委任契約に関連する理解不足が原因であることが多い。まずは準委任契約を中心に紹介しよう。専門家としての責任である「善管注意義務」についても知っておいてほしい。

「 委任」と「準委任」は同じ

 まずは「委任」「準委任」の言葉の定義に関する誤解を解いておこう。ごくたまに、「委任という言葉に“準”がついているため、委任よりも効力などが低い契約なのか」という質問をされることがある。確かにそう感じなくもないが、実際には委任も準委任も同じである。

 委任とは「法律行為」を委託する場合、準委任は「法律行為でない事務」を委託する場合の契約である。物品の売買契約などの法律行為を委託する場合は委任、システムの要件定義など法律行為ではないことを委託する場合は準委任契約となる。ある仕事を別の人や会社に依頼するという意味は同じなのだが、その中身によって法律では呼び方が違っているのだ。

 民法には「売買」や「賃貸借」といった13種類の契約類型が規定されている。これらのなかに「請負」と「委任」の契約類型が含まれている(図1)。ここに準委任は記されていないが、民法の規定は委任の規定をそのまま適用している(法律の世界では“準用する”という)。そのため「準委任」と呼んでいるにすぎない。法的な効力は、委任と準委任とで違いはないのである。

図1●民法で規定されている13種類の契約類型
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