化学大手のデュポン日本法人(東京・千代田)には、一風変わった施設がある。JR名古屋駅から車で10分ほどの距離にある「デュポンジャパンイノベーションセンター(DJIC)」(名古屋市)だ(写真)。オフィスビルの一室に足を踏み入れると、そこには真っ白な空間が広がり、デュポンが携わる製品や要素技術が整然と並んでいる。

 デュポンは樹脂や塗料などを手掛けているが、素材メーカーが展示場を持つのは異例のことだ。それでも「単なるショールームじゃないの?」という疑問が湧く。確かに一見しただけでは、そう感じるかもしれない。私もDJICに足を踏み入れた瞬間は、そう感じた。

 しかし、実態は違う。ここはデュポンが“裏方”としての素材メーカーから脱皮し、顧客と一緒にイノベーションを起こす“共同開発センター”といえる。それを象徴するように部屋の一角には、デュポンが設計から開発、デザインまで手掛けた自動車のモックアップまで展示してある。

 実際にDJICで何が行われているのだろうか。

 展示空間の奥にはミーティングルームがいくつもあり、DJICの担当者と顧客が、じっくり話し合えるようになっている。自動車メーカーなどの顧客にデュポンの技術を見てもらい、感想や要望を聞く。普段の商談ではなかなか将来展望まで話は及ばないが、ここでならじっくり話をして、イノベーションの種を見つけ出せる。必要なら、社内の事業部門の担当者に話をつなぐ。

 同社の天羽稔会長はここを「デュポンの全体像を分かってもらえる場」と言う。デュポンの技術を説明しながら、顧客のニーズを探り、そこから例えば「軽量化が必要では?」といった具体的な内容にまで踏み込んでいくわけだ。

 DJICの前身は「デュポンオートモーティブセンター(DAC)」。その名の通り、自動車業界向けという色彩が強かった。ある自動車メーカーは、200回近くDJICを訪れているほどだ。それがDJICへの名称変更に伴い、「食糧」や「エネルギー」といった新領域にまで対象範囲を広げた。「自動車のお客様に対しては、内容を充実させたり、開発支援体制を強化したりすることで、取り組みを『深化』させていく。一方、非自動車のお客様に向けては、まずは自動車で培った技術を横展開していきたい」(石岡治道執行役員DJICセンター長)。

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