馬場俊介(ばば・しゅんすけ)
1993年早稲田大学教育学部卒業、富士通入社。銀行系証券会社の債券ディーリングシステム構築を振り出しに、一貫して金融業界のシステムエンジニア、プロジェクトマネジャーとして従事。インターネットバンキングシステムの構築や、メガバンクの勘定系システムの構築を成功に導く。42歳。
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 「過去25年、多くのシステムエンジニア(SE)を見てきたが、彼は間違いなく5本の指に入る」。富士通でメガバンク向けシステム構築プロジェクトを統括する責任者が、右腕と頼みにする「スーパーSE」がいる。金融システム事業本部のシニアマネージャー、馬場俊介だ。

 もう少し、上司の言葉を聞いてみよう。「2012年の春にプロジェクトが頓挫しかけた。富士通の場合、SEを大量に投入して解決を図るのが普通だが、馬場は違った。現場に深く入り込んで問題点を特定し、最小限のコストで立て直した。コスト削減効果も、恐らく1億円ぐらいあるだろう」。

 馬場が“炎上”プロジェクトの火消しをしたのは、今回が初めてではない。インターネット銀行向けのシステムなど、多くの案件を立て直した実績を持つ。そして、約2万7000人いる富士通グループのSEの中で、馬場はエースの一人と見なされるようになった。

「仲間」だと言い聞かせる

 その理由は、コミュニケーション能力の高さにある。「仮に自分がスーパーマンでも、一人でできることには限界がある。大きな仕事をするには、自分が軸になって周りの人を巻き込まないといけない」。これが馬場の信念だ。

 部下や取引先だと考えて一線を引かず、一緒に戦う「仲間」だと自らに言い聞かせて向き合うことで、相手の懐に飛び込めるという。彼らを動かすために、馬場はまず「自分の弱さ」を恥ずかしげも無くさらけ出す。「何もできないので助けてほしいと頼ると、多くの人が意気に感じる。すると、積極的な意見が次第に出るようになる」。プロジェクトの阻害要因も浮き彫りとなり、解決策が見いだせる。

 馬場はもともと口下手だったと言う。「妻と結婚前にデートした時、自分からはしゃべれなかった」。それを訓練で克服した。「5年続ければ、自然と相手の気持ちが読め、心を動かす話し方ができるようになる」と馬場は説く。

[注]本記事に登場する人物の年齢や肩書きは、日経コンピュータ2012年11月8日号掲載時のもの。
出典:日経コンピュータ 2012年11月8日号 pp.26-33
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。