とにかくゲームが作りたかった。ずっと親にねだり続けて、小学校5年生の時に願いがかなった。誕生日プレゼントにPC(パソコン)をもらえたのだ。すぐに図書館で「マイコンBASICマガジン」(電波新聞社、現在は休刊)を借り、書いてあるコードをPCに入力していった。気付いた時には、プログラムが書けるようになっていた。

 サイバーエージェント社長の藤田晋が「国宝級」と絶賛する同社の主席エンジニア、名村卓の少年時代はIT抜きには語れない。成長するなかで、システムやサービスの全体像を見極め、一人で「もの作り」を完結させられるスキルを、当然のように身につけた。

 名村がエースになったきっかけは、2008年から「アメーバピグ」の開発責任者を務めたことだった。アメーバピグとは、ユーザーが自分に似せたアバター「ピグ」を作り、仮想空間で別のユーザーと交流したり、ゲームを楽しんだりするサービスのことだ。

名村卓(なむら・すぐる)
2003年会津大学コンピュータ理工学部中退。ITベンダーでECサイト構築に携わった後、サイバーエージェントに転職。「アメーバピグ」「ピグライフ」など同社の主要サービスを数多く開発。32歳。(写真:陶山勉)
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 当時サイバーエージェントは、ブログを軸とする「Ameba」の黒字化に四苦八苦していた。課金収入を見込めるアメーバピグが軌道に乗れば、目標に大きく近づく。

 だが、開発は難航した。アメーバピグはFlashで動作する。ピグが動くたびに大量のデータが発生し、それをバックエンドのサーバーでリアルタイム処理する必要がある。ピグを軽快に動かすには、データベースとの通信手法にも知恵を絞らねばならない。まさに「総合力が問われるサービスだった」と名村は振り返る。

 ここで、小学生の頃から培ってきたスキルが生きた。

 Flashとサーバー、データベースや通信のそれぞれに長けたエンジニアは数多い。だが、各々を組み合わせるとなると話は別だ。名村は、Flashとデータベースを連動させたり、通信データ量を削減したりして、サーバーの同時接続数を確保する仕組みを構築。「システム全体を見極める」スキルが、困難なプロジェクトを成功に導いた。

 「初物の技術を積極的に導入する」ことも名村のミッションだ。2011年に、「Node.js」と呼ぶ分散処理のミドルウエアをアメーバピグの派生サービスに導入したのは、ほんの一例だ。Node.jsを採用したことで、少数のサーバーで大量のアクセスを効率的にさばくことが可能になり、コストパフォーマンスが大幅に向上したという。

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