「クールなテクノロジーを開発して、世界史に自分の名前を刻みたい。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズのようにね。10億人以上の人生に影響を与えるのが目標だ」。自信をのぞかせながら語るのは、楽天執行役員のジェームズ・チェン、34歳。社長の三木谷浩史が「スーパーエンジニア」と評価する、楽天のエースである。

 海外のEC(電子商取引)企業を相次いで買収し、英語を社内公用語にするなど、猛烈な勢いでグローバル化を進める楽天。チェンは楽天市場のシステム開発を指揮している。

ジェームズ・チェン(James Chen)
2000年米マサチューセッツ工科大学卒業。在学中にベンチャー企業を立ち上げた後、複数の米企業でCTO(最高技術責任者)を務めた。楽天が米企業を買収したのを機に、2009年楽天入社。2011年から執行役員。台湾生まれで8歳時に家族と共に米国移住。34歳。(写真:新関雅士)
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 チェンが目指すのは、「越境取引」を拡大すること。例えば、ブラジルの店舗で売っているテーブルを、フランスのユーザーが楽天経由で買う。あるいは、日本の個人商店が世界中に販路を拡大する。「こうした越境取引は、米アマゾンや米イーベイも手掛けていない。いち早く実現できれば、楽天がEC事業でナンバーワンになれる」と鼻息荒くチェンは話す。

 そのためには、買収した企業ごとにバラバラになっている、情報システムの連携を深める必要がある。商品価格や言語、さらに物流など、ECに不可欠な情報が共通化されなければ、越境取引など絵に描いた餅に終わってしまう。システムこそが、楽天が世界で飛躍するための鍵となるのだ。

 チェンが現在注力するのは、全世界共通で使えるAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の開発だ。各国子会社の基幹系システムを統合しなくても、情報をやり取りできる仕組みを整えれば、楽天市場出店者が国境をまたいで商品を販売するのが容易になる。「開発スピードを加速でき、ビジネスアイデアを容易に、素早く生み出せるようになる」とチェンは意気込む。

 ではなぜ、三木谷はチェンに重責を任せたのか。それを理解するためには、チェンが「エースになったワケ」を探る必要がある。

2カ月も待っていられない

 チェンは1977年に台湾で生まれ、8歳の時に家族で米国に移住した。「とにかく、何かを作るのが大好きだった」とチェンは振り返る。10歳になる前から、プログラミングも始めていた。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)に入学したチェンは、化学を専攻した。だが、大学生活は想像とは違っていた。じっと実験室の机に座り、化合物を合成する日々。「ある化合物を作るのに2カ月もかかった。残りの人生をそんなふうに過ごしたくはなかった」。

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