イトーヨーカ堂のネットスーパーの売り上げは、その市場の半分以上を占める。全国178店舗のうち、139店舗がネットスーパー事業を手掛ける(2012年10月時点)。

 O2O (Online to Offline)の成功例が少ないなかで、この躍進は異例ともいえる。その成長を支えたのはネット推進部マネージャーの佐久間直さんだ。

 本場米国でさえ成功しなかったネットスーパーが成功している理由は、もともとの店舗と本部のマスターデータベースを分散型で構築したことだ。

 各店舗で販売価格が異なるスーパーの商品マスターデータは、ローカルの店舗が入力。それらのPOS(販売時点情報管理)情報を吸い上げ、本部が売れ行きを分析し、指示するという情報伝達の土台があった。分散型だから、ネットスーパーが始まっても、新たなマスターデータを構築する必要はなく、ネット機能を加えるだけでいい。

 また、売り上げは店舗のものになることがネットの成長に大いに寄与した。ネットが既存店舗と競合することがないからだ。

 猛暑や雨天などで店舗への来客が少なければ、ネットでの売り上げを促進できるという補完関係にある。事業の多角化を先読みしたシステム構築が功を奏している。

ページビューと購買の相関を発見

 システム全般を監督する佐久間さんは、日々データ解析を怠らない。時系列で見るPV(ページビュー)数というデータからは、購買との顕著な相関関係が表れている。

 配送前日の17時に注文が集中し、食事時間を終えた頃の20時から23時までが、次のネットゴールデンタイムとなる。これは、まず17時に広告の商品と配送時間を確保しておき、後で追加注文をゆっくりするという行動パターンだ。

 翌朝の午前中に1つの波。これは、朝のチラシ効果である。

 店舗側は、前日のオーダー状況を見ながら、翌日の折り込みチラシの内容を変えている。しかも、受注完了した商品が配送を待つ間に、棚に陳列されるのを見て、店舗の配列も変える。クレームは、コールセンターでなく、地元の店舗が受ける。お客様も近くの店舗が対処してくれることで安心感が高まる。

 佐久間さんは当初、ネットスーパーを店長に理解してもらうために、全国を走り回って啓もうした。原動力は、ネットでの顧客からのコメント反応だ。

 顔を見て話すより、厳しい批判も出るが、それを改善すれば競合店に勝てる。データを見ると、お客様のログイン数と受注件数にはギャップがあり、このロスはチャンスにほかならない。

 ネットスーパーの先頭を走り続けるために、常に創意工夫している。


石黒 不二代(いしぐろ ふじよ)
石黒 不二代(いしぐろ ふじよ) ネットイヤーグループ社長兼CEO。名古屋大学経済学部卒業後、1981年ブラザー工業に入社。米スタンフォード大学でMBA(経営学修士)を取得。米シリコンバレーでコンサルティング会社に勤務し、99年にネットイヤーグループの設立に参画。2000年から現職。
出典:日経情報ストラテジー 2012年12月号 p.91
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