ソーシャルクラウド実現に向けて

 本連載では、8回にわたりソーシャルクラウドの全体像と、その実現に必要なBCP機構、インタークラウド機構、CEP技術、データストア技術、クラウド基盤に関する調査結果について解説した。

 予想される首都圏直下型地震に備え、このソーシャルクラウドの早期実現が求められている。これまでの連載で紹介した通り、その実現にはさまざまな課題がある。そのため、開発する機能に優先順位をつけて課題を解決し、ソーシャルクラウド実現への一歩を確実に踏み出していく必要がある。

インタークラウド基盤の開発を先行

 平常時におけるオープンガバメントなどで利用する機能や、大災害発生時の初動・復旧・復興を支援するソーシャルクラウドシステムの重要な機能は、複数の公共的クラウドが提供するオープンデータやソーシャルデータを簡単に再利用する仕組みを提供できる。そのため、この複数のソーシャルクラウドから提供されるデータを安全に共有する仕組みを、まず開発していくのが望ましい。具体的には、この仕組みにはインタークラウド基盤が必要となるため、この開発を先行させるとよい。

 インタークラウド基盤では、本連載で紹介した新しいクラウド基盤の他に、既存のクラウド基盤での活用も視野に入れて開発を行う必要がある。その後、CEP、データストア、クラウド基盤を開発し、ソーシャルクラウドの全貌を明らかにする必要がある。最終的には、平常時や災害時のユースケースを想定した実証実験を行いその有効性を検証しなければならない。

 ソーシャルクラウドで優先開発すべき機能

 下図1にソーシャルクラウドのそれぞれの機能に関して、優先して開発すべき項目を整理した。

図1●ソーシャルクラウドで優先開発すべき機能
[画像のクリックで拡大表示]

 以下からそれぞれの機能の優先項目に関する方針を紹介する。

【インタークラウド】
 複数のクラウドを跨って、アプリケーション、ストリームデータ、データストアを論理的に統合して簡単に利用できるようにする機構を開発する。本機構の開発範囲は、「複数のクラウドのIaaS仮想的に統合するオーケストレーション」、「複数のクラウド上に仮想的に作られたソーシャルクラウドの共通リソースを制御するソーシャルクラウドマネージャ/ディレクター」、「ソーシャルデータやアプリケーションを管理するソーシャルクラウドブローカー」の3つの機能となる。

【CEP】
 データセンタやホストが地理的に広域に分散している環境において、複数のCEPエンジンを効率的に運用するために必要となる、複数CEPエンジン運用環境機構を開発する。本機構は、「性能向上分散処理」と、「スケーラビリティ確保」に主に関連し、その開発範囲は、「CEPエンジンの配置を最適に制御するエンジン配置制御機能」、「CEPエンジンで動作する監視クエリを最適に配置し制御するクエリ配置制御機能」、「広域に分散して動作しているCEPエンジン・監視クエリを管理する広域分散マネージャー」の3つの機能となる。

【データストア】
 複数のクラウドシステムが異なるベンダーや管理者によって管理されている中で、それぞれが管理するソーシャルデータを統合して見せる統合データストア管理機構を開発する。本機構の開発範囲は、「複数のクラウドに格納されているデータを突き合わせて解析処理を行うデータのアドホック突合せ技術」、「複数クラウドシステムで同一のストレージを用いているとは限らないケースに対応する異機種間レプリケーション技術」、「複数のクラウドシステムやデータセンターをまたがるクエリ最適化技術」、「大量のストリームデータを確実に格納するデータストア」の4つの機能となる。

【クラウド基盤】
 特定用途および環境の制約を受けない、独立に進化している各種ソフトウエア・コンポーネントを有機的に接続/制御する垂直統合技術を開発する。ソーシャルクラウドのサービスを形成する各種ソフトウエア・コンポーネントの技術は既に開発され、各開発コミュニティにより相互に独立した開発が継続的に行われている。そこで、これら機能ソフトウエアを有機的に結び付け、SLAを厳守するために利用するインフラストラクチャも含めて垂直統合する機能を開発する。

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