TD-LTEは当初、中国など一部の限られた国での局地的展開にとどまるという見方が強かった。それが今や中国独自色は完全に払拭され、世界中に広がりつつある。先行するFDD方式のLTEとは、高い共通性を生かして補完的に共存していくことになりそうだ。


 LTE(Long Term Evolution)の提供方式には、上り/下りで異なる二つの周波数帯域(ペアバンド)を使用するFDD(Frequency Division Duplex:周波数分割複信)と、上り/下りで共通した一つの周波数帯域(非ペアバンド)を使用するTDD(Time Division Duplex:時分割多重複信)の二つがある。3GのW-CDMA、CDMA 2000はともに前者のFDD方式であることから、LTEでもFDD方式採用が自然の流れとなり、当初はLTE-FDDが大勢を占めていた。

 ところが現在、LTE-FDD完全優位の状況は一変しつつある。ペアバンドが不要、上り/下りの非対称利用が可能といったTDD方式のメリットに着目した携帯事業者が2011年以降、LTE-TDD(以下、TD-LTE)を相次ぎ導入している。中国独自色を払拭できなかった3GのTD-SCDMAとは異なり、TD-LTEはグローバル規模での展開が進んでいる。

8カ国9事業者が商用化済み

 2011年9月、サウジアラビアの携帯事業者のトップ2であるモビリーとSTCが、世界初となるTD-LTEの商用サービスを開始した。携帯電話の国際業界団体GSAによれば、TD-LTEの商用展開数は8カ国9事業者に達した(2012年7月11日時点)。FDD方式を加えた全LTEの商用展開数は45カ国89事業者に及んでおり、TD-LTE比率は国数ベースで2割弱にすぎない。ただしここで注目すべき点は、導入当初から提供地域が世界中に広がっていること(図1)。前述の2社に加え、オーストラリアのNBN Co、ブラジルのスカイ・ブラジル、インドのバーティ・エアテル、日本のソフトバンクモバイル(図1の※1を参照)、ポーランドのAero2、スウェーデンのHi3G、英UKブロードバンドが商用化済みである。

 さらに商用開始予定国(図1の※2を参照)の22カ国を加えると、今後数年の間にほぼ世界全域でTD-LTEの商用サービスが提供されることになる。TD-LTEの拡大に最大のインパクトを与える中国では、最大手の中国移動が2013年にも商用化する見込みだ。

 TD-LTEを推進する業界団体GTIの会員数も事業者48社、ベンダー30社に上る(2012年8月1日時点)。

図1●世界のTD-LTE展開マップ(2012年7月11日時点)
商用開始済みは8カ国9事業者に上る。
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WiMAX最大手もTD-LTE導入へ

 世界の主要携帯事業者がLTEの採用を決定する中、競合規格のモバイルWiMAX陣営の勢いは低下し加入数も伸び悩んでいる。こうした状況下、WiMAX2へのアップグレード計画を断念し、LTEへ乗り換えるモバイルWiMAX事業者が少なくない。モバイルWiMAXはTDD方式のため、TD-LTEを採用する事業者が大半である。 こうした状況もTD-LTEの勢力拡大を後押しすることになるだろう。

 例えばモバイルWiMAX最大手の米クリアワイヤは2013年上期中に、需要の高い31都市でTD-LTEの商用サービスを開始する計画。2012年1月には中国移動とTD-LTE端末の試験運用において提携を発表。7月にはTD-LTEを利用した米中間の国際ローミング提供に関するMOU(Memorandum of Understanding)も締結している。業界トップ同士のタイアップは、今後のTD-LTE推進を大きく加速させる原動力になることが期待される。このほか、マレーシアのP1や台湾のグローバル・モバイルなどのモバイルWiMAX事業者もTD-LTEの導入準備に着手している。

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