企業のグローバル化が叫ばれ、株式資本主義と短期的収益を重視する傾向が強まっているようだ。しかし、私は25年にわたるGE勤務で、米国の大企業は持続的成長と企業価値の最大化を目指していることに気付いた。長期的視点に立って人材を育成し、従業員の自己変革力を高めることが米国型企業経営の本質だ。130年の歴史を持つGEの歴代CEOはわずか9人。任期が平均14年強と長いため、大きな改革にじっくりと取り組める。1950年代の第5代CEOのラルフ・コーディナーはクロトンビルを開設し、後継者育成プログラムに力を入れた。現在のGEの人材育成プログラムは、第8代CEOのジャック・ウェルチが掲げたリーダーシップやGEバリューの体現を目指すものだ。

大型統合で意思決定迅速化、重複機能解消などの効果も

LIXILグループ 取締役 代表執行役社長 兼 CEO LIXIL 代表取締役社長 兼 CEO 藤森 義明 氏
LIXILグループ
取締役 代表執行役社長 兼 CEO
LIXIL
代表取締役社長 兼 CEO
藤森 義明 氏

 LIXILグループでも、グローバルに活躍できる人材の育成と評価の仕組みを動かし始めた。LIXILとは、リビング(LIVING)とライフ(LIFE)の改善を通じてより良い生活を育てていく、という趣旨の造語。傘下には事業会社のLIXILがあり、金属・建材、住宅設備機器、電器設備などのビジネスを各カンパニーが執行する。大型統合は、意思決定を迅速化し、住宅総合ソリューションの提供、重複機能の解消による効率化、購買でのスケールメリットを狙った。

 ただ、組織を改編したからといって、それだけで企業をグローバル化できるわけではない。LIXILグループには圧倒的な製品ブランド力、多くの業界No.1製品、建材のトータルサプライヤーという強みがあるが、いずれも日本国内だけでしか通用しない。グローバル化を果たすために、海外進出の遅れや国内の高コスト構造などの弱点を克服しなければならなかった。

目標はグローバルリーダー、IT・業務統合などでコストを30%削減

 そこで、2011年4月から2016年3月までのLIXILグループ中期経営ビジョンでは「住生活産業におけるグローバルリーダーとなる」ことを端的な目標として設定した。具体的には、売上額は3兆円でうち海外1兆円、営業利益率と株主資本利益率(ROE)はグローバル企業並みの8~10%の目標を掲げ、企業文化のグローバル化も目指すという内容である。

 さらに、変革の三本柱として事業革新、構造改革、グローバル化も設定した。事業革新によって国内売上高2兆円を達成し、国内事業統合などの構造改革によって固定費の削減と連結営業利益率8%を実現する。海外売上高1兆円を確保するために、中国や東南アジアへの進出も加速する。

 事業革新の核となるリフォームと環境・エネルギーのための商材は、すでに揃っている。例えば、リフォーム事業を支えるビジネスモデルとして総合建材センターKen Depo(t 建デポ)とスーパービバホーム「リフォームコーナー」を立ち上げた。一部屋リフォーム工法「ココエコ」の販売も今年4月から始めた。今後の省エネ対策の主戦場となる住宅・オフィス市場対策として、既存の多様な省エネ製品に加えて、東京大学生産技術研究所と共同で実証実験COMMAハウス(コマハウス)を進めている。

 構造改革としては、コスト30%削減を狙うC-30プロジェクトを昨年から実施している。業務統合とシステム統合を進め、さらに新たな基幹システムを開発するなどして2010年度と比べて約1100億円減らす目標を掲げる。システム統合によって、オンライン発注作業や見積作業の簡素化、顧客情報と営業活動情報の共有、購買部品情報検索の生産性向上など業務面での効果も期待できる。

 グローバル化は、基本的に合併買収(M&A)を軸に進めていく。アメリカンスタンダードのアジアパシフィック部門(中国など)、上海美特カーテンウォール(中国)、ペルマスティリーザ(イタリア)の子会社化はすでに完了した。中国の家電大手である海爾集団(ハイアール)とは、生産会社を合弁で設立した。

 中期経営ビジョンを具現化するうえで欠かせないもう1つの要素は企業文化のグローバル化だ。LIXILグループでは、グローバル経営の哲学としてローカル化によるグローバル化、ダイバーシティの促進、世界共通のコアバリューと人事制度、グローバル人材育成、リバースイノベーションを掲げる。例えば、ローカル化によるグロバル化は、買収した企業の経営陣を継続して雇用・登用することで推進されている。

グローバル人材を見い出しリーダーシップを育成する

 また、世界共通のコアバリューとして、目標達成への熱意、チームワークと人材育成などの9項目を日本語、英語、中国語で作成し、各項目に対応した行動指針をLIXILバリューとして定義した。この達成度を人事評価の基準とするのが、文化、宗教、性別などに左右されない人事制度、メリトクラシー(実践主義)である。

 グローバルに通用する人材を育成するために、リーダー教育も強化した。研修施設を改修してLIXILグループ版クロトンビルとし、次世代の幹部候補社員に対して8カ月に及ぶエグゼクティブ・リーダーシップ・トレーニングを実施している。MBA留学制度にも、年間10人の募集定員に対して60人程度の応募がある。

 LIXILグループはリーダーに対し、計画を達成する、将来の持続的な成長のために改革を推進する、強い結果が出せる組織を構築する、次世代の幹部と後継者を育成する、LIXILバリューの手本を示す、という5つの役割を求めている。この役割の達成に欠かせないビジョンを示す力、伝える力、実行する力を身に付けてもらうために、これからも育成に力を注ぐ。