2011年の後半からフランス携帯電話市場の話題を独占したのが、第4の事業者「フリー」がもたらした価格競争だ。迎え撃つ格好の既存事業者は、新たな収入源になり得て、かつフリーとの差別化が可能なLTE(Long Term Evolution)の導入に積極的になってきた。フランス携帯市場の事業者動向を解説する。


 2012年3月、フランスの主要な携帯電話事業者3社はLTE(Long Term Evolution)導入に向けたマイルストーンを相次いで発表した(表1)。

表1●各携帯事業者のLTE導入プラン
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 最大手のオレンジは3月22日付けのリリースで、LTEのトライアルをマルセイユで開始すると発表した。2010年のアニュアルレポートには、パリでトライアルの準備中とあった。マルセイユはフランス第2の都市とはいえ人口は80万にすぎない。これに対しパリ(都市圏)は1200万人の人口を抱える大都市だ。

 LTEを導入する事業者に課せられた義務の一つにデジタルデバイドの解消がある。マルセイユ近郊には小さな村が多数ある。オレンジはマルセイユ周辺の過疎地域にトライアルを実施することで、デジタルデバイドを解消していく姿勢をアピールしたいのだろう。

 SFRは3月29日、LTE商用サービスのエリアを明らかにした。2011年9月からトライアルを実施しているマルセイユではなく、モンペリエとリヨンで2013年初頭に商用サービスを始める。モンペリエは人口約25万人(東京都墨田区と同じくらい)の南フランスの地方都市である。リヨンは多くの銀行がある人口50万程度(東京都杉並区と同じくらい)の商業都市である。

 ブイグテレコムが3月22日に発表したLTE導入計画は次の通り。2012年6月からリヨンでトライアルを実施し、同年末までに5000基の基地局を建設する。2013年初頭までに商用サービスを開始し、同年末までに主要都市でサービス提供予定である。

価格破壊をもたらした「フリー」

 最近になって、各社がこぞってLTEの導入プランを発表した背景には、第4の事業者「フリー」の存在がある。同社は2012年1月に格安の定額サービス(月額20ユーロで通話、メッセージ、データ通信とも使い放題)を開始した。わずか2カ月で約200万のユーザーを獲得したと報じられた。迎え撃つ格好の既存3事業者は、料金の引き下げを実施したものの、フリーの料金とは開きが大きく対抗できるレベルに至っていない。

 そもそもオレンジとSFRは経営状況も芳しくない。フリーが参入する以前の2011年通期の決算報告は両社とも減収減益だった。規制によるローミング料金の値下げや、VAT(付加価値税)の税率引き上げなどが影響している。オレンジは2012年第1四半期の決算も減収減益となった。アフリカやスペインの事業は好調だが、フリーの参入がフランス国内の事業に大きく影響した。SFRもフリー参入による価格競争激化の影響を被った。2012年第1四半期のポストペイド利用者は27万4000人減少した。

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