HTML5の長所を取り入れようと、企業向けのソフトウエア製品やクラウドサービスでHTML5を採用する動きが始まった。

将来性を考えてHTML5に

 例えば、グループウエアを手掛けるネオジャパンはいち早く、2011年4月に出荷を始めたWebメールソフト「Denbun」の新版で、ファイルのドラッグ・アンド・ドロップやメール表示機能にHTML5を採用した。

 「従来はFlashとSilverlightを使って操作性を向上させていた。しかしiPadがFlashに対応しないこともあり、将来性を考えてHTML5に切り替えた」と、ネオジャパンの齋藤晶議 代表取締役社長は話す。今秋リリース予定のグループウエア「desknet's」新版もHTML5に全面移行する。

専用アプリと変わらない機能を実現

 専用ソフトのHTML5化も始まった。アシストはイスラエルのエリコム・ソフトウエアが開発したデスクトップ仮想化ソフト日本語版の国内販売を、5月にも開始する。特徴は、仮想デスクトップの画面を、専用のネイティブアプリケーションのほか、HTML5対応Webブラウザーでも表示・操作できることだ(図4)。Webブラウザーでも専用アプリと変わらぬ機能を実現する。

図4●Webブラウザーで仮想デスクトップを実現する、イスラエルのエリコム・ソフトウエアが開発した「Access Now」の画面
Access NowはHTML5を使ってWebブラウザーだけで仮想デスクトップを操作可能にする
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 「Access Now」と呼ぶソフトを、端末とやり取りするサーバーにインストールして動かすと、HTML5を使ってWindowsの仮想デスクトップ画面をブラウザーに表示する。

 具体的には二つのHTML5技術を使っている。一つは<canvas>タグで、サーバーから送られてくる情報を基に、Webブラウザー上にデスクトップ画面を操作する様子を描画する。

 もう一つは「WebSocket」だ。WebSocketはHTTPをベースにして開発された新しい通信方式で、通信のオーバーヘッドを減らすことでリアルタイムに近い通信を可能にする。

 Access Nowがクライアント端末に配信するHTMLファイルで、JavaScriptを使ってWebSocketのAPIを呼び出し通信する。エリコムは専用ネイティブアプリでは独自のデータ圧縮方式を採用し、通信の遅延を回避するが、ブラウザーで同じ機能を実装するのは難しい。そこでHTML5対応ブラウザーで使えるWebSocketを利用し、通信遅延が生じないようにする。

HTML5アプリのマーケットプレース

 HTML5アプリをネット経由で販売するマーケットプレースが2012年、立ち上がる。米Mozillaは2012年夏にも、HTML5で開発されたアプリケーションを扱うサイト「Mozilla Marketplace」を開設する。HTML5対応ブラウザーで使用可能なHTML5アプリを販売する。

 米マイクロソフトも、Windows 8向けにHTML5アプリを配信するサイト「Windows Store」を、2012年2月に立ち上げたばかり。グーグルはすでにChrome用のアプリ配信サイト「Chromeウェブストア」を開設済みだ。

 HTML5の普及により、スマートフォンのように、業務に役立つアプリを簡単に入手することができるようになる。簡単なアプリケーションなら、IT部門が開発する必要はなくなるかもしれない。

出典:日経コンピュータ 2012年4月12日号 pp.67-69
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