ゼロから新しい事業を興す「スタートアップ企業」には、今、追い風が吹いている。「優れたアイデアがあれば、資金を出してもいい」というベンチャーキャピタリスト、資本家、企業が、ますます増えているのだ。

 「グローバルで通用するインターネットサービスを一緒に作り出そう」――。KDDIの代表取締役社長の田中孝司氏は、7月上旬に都内で行われたイベントで、ゲストとして招いた起業家たちに力強く呼びかけた。同社は、ベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」を通じて50億円規模の資金を投下する(写真1)。

写真1●スタートアップ支援を強化するKDDI
7月上旬に行われた支援イベント
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 スタートアップ企業への支援は資金面だけではない。KDDIは、起業インキュベーション(孵化)事業「KDDI ∞ Labo」(ムゲンラボ)を新設し、オフィススペースやKDDI社員などによる援助を行っている。NTTグループも6月上旬、「大企業とベンチャーの融合」をテーマに、NTTグループ企業とベンチャー企業とのマッチングイベント「Challengers SPRING 2012」を開催した。NTTグループとスタートアップの協業から、世界に通用する事業の創出を図っている。

“Facebookマネー”が流れ込む

 スタートアップ企業への追い風は、日本に限らない。スタートアップの“本場”シリコンバレーでも、今後数年で莫大な資金が流れ込む。

 きっかけは5月のFacebookのIPO(新規株式公開)。多額の上場益を得たベンチャーキャピタル(VC)や個人投資家(エンジェル)、従業員などが、それを新興企業に投資するとみられているのだ。「2004年に米グーグルが上場したときを振り返ってみると、その後2007年くらいまで数年間にわたって新興企業への投資が一気に増えた」(シリコンバレーを拠点に投資活動をしているJAFCOベンチャーズ ジェネラル・パートナーの菅谷常三郎氏)。

 既にシリコンバレーでは、スタートアップ企業向けの資金を求めて、世界中から起業家の卵たちが集まり始めている。

 例えば、5月末にサンフランシスコで行われたピッチ(プレゼンテーション)イベントの主催者は「スタートアップ・サウナ」という(写真2)。その名前が示唆するとおり、フィンランドに本拠があるインキュベーション企業である。同社は、サンフランシスコ市内に入居スペースを確保し、出資企業とシリコンバレーの投資家コミュニティとの橋渡しをする。出資先は主に北欧や東欧企業だが、中には中国企業もある。

写真2●毎週のようにサンフランシスコ市内で行われるピッチ大会
この日の協賛企業は、スウェーデンの「スタートアップ・サウナ」
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 資金供給が増えているとはいえ、起業資金を巡る競争は、一段と激しさを増すことは間違いない。

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