若手社員「課長、勢い、量ともに課長を超えました。記録更新です!」

課長「なに?! よし、もう一杯飲むか。記録を塗り替えてやる。あっ、店員さん、生ビール大ジョッキ追加で!」

 仕事帰りの居酒屋で、男たちがある機器を使って熱戦を繰り広げている。舞台はなんとトイレ。セガが開発した、用を足しながらゲームを楽しめるトイレ用のサイネージ機器「トイレッツ」が、男たちを熱くさせているのだ(図1)。

図1 養老乃瀧は、セガの「トイレッツ」を採用した(a)。トイレッツは、男性用小便器に取り付けるセンサ装置と、小便器の上方に設置するディスプレイで構成される。センサ装置は、人の有無を検知する赤外線センサと、尿の速度や量などを算出するために用いるマイクロ波センサを備える(b)。トイレッツで来店者の競争心を煽ることで、ビールなど飲料の消費量の増加を期待できる。
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図2 ゲーム中は、来店者の「やる気」を刺激する映像が画面に出る(a)。終了後には、ゲーム結果とともに店舗の広告などがディスプレイに表示される(b)。試験設置した店舗では、表示した飲み物の売り上げが2.2倍になった。
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 トイレッツでは、放出された尿の速度や量などを算出し、そのデータを元にゲームを楽しめる。具体的には、野球のスピードガンで用いるマイクロ波センサを利用して、尿の速度を算出し、尿の量などを推定する。例えば、尿の放出速度が速かったり、量が多かったりすると、対戦ゲームで勝利できる。

 1~2分間同じ場所に立ち続けるという性質から、男性用小便器の上に設置するポスター広告などは以前からあった。セガはそこにゲーム性を持ち込み、ユーザーの競争心やゲームを楽しみたくなる心理を刺激することで、広告効果の向上を狙った。

 トイレッツでは、ゲーム中やゲーム終了直後に表示される結果画面の中に、飲食物の広告情報などを提示する(図2)。例えば画面内に「ビール大ジョッキ、今なら××割引」などと書いておけば、ゲームに敗れたユーザーは「もう一杯」となってしまう。

 実際、ある居酒屋でトイレッツを試験運用したところ、紙のPOPで告知する場合と比較して、告知した飲み物の1週間の注文数が一気に2.2倍に伸びたという。

 セガは、2011年11月から15万円でトイレッツの一般販売を開始した注1)。居酒屋チェーンなどを展開する養老乃瀧は、既に同年10月から順次、同社の居酒屋約40店舗にトイレッツを先行設置している。

注1)これはゲーム・ソフト1種類込みの価格。ゲームは5種類あり、「通常版」のゲームを無料で楽しめる。本文にあるように、対戦機能などを加えた有料(10円)の「デラックス版」もある。試験運用では、トイレッツ1台あたり、1日平均580円を売り上げたという。つまり、1年以内で購入代金を回収できる計算だ。

 セガによれば、居酒屋の他にパチンコ店やショッピング・モールなどで多くの引き合いがあるとする。国内だけでなく、「米国や英国、フランス、デンマーク、ロシアなど海外からの問い合わせも多い」(同社)。顧客からも、トイレッツ活用に向けたさまざまな提案を受けているという。

出典:日経エレクトロニクス 2010年2月10日号 日経エレクトロニクス
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。