メインフレームやミニコンを駆逐し、ITの王者として君臨してきたPCが、その座を明け渡す時がやってきた。今まさに、スマートフォンやタブレット端末といった新しい端末が、PCに代わって「ポストPC」の時代を作り出そうとしている。

 これら「ポストPC」端末の最大の特徴は、情報の作成ではなく閲覧を主眼にしていること。この特徴が、これまで情報を活用したくてもできなかった経営者やビジネス現場の最前線で働く人たちから、熱狂的な支持を集めている。情報活用のシーンも、店頭や製造・医療現場、乗り物の中にまで広がっている。

 様々な人があらゆる場面において情報を活用するポストPC時代の到来は、“真の”情報活用の幕開けだ。ポストPC時代によって、何が変わるのか。その全容を示す。


 秋田県に「iPad」を肌身離さず持ち歩く銀行頭取がいることをご存じだろうか。北都銀行の斉藤永吉頭取がその人だ。

 61歳の斉藤頭取は、営業店や企画部門でキャリアを積んできた生え抜きの銀行マンだ。最新のIT製品が大好きという「マニア」ではない。iPadも、情報システム部門の提案で持つようになった。ノートPCを持ち歩かない斉藤頭取にとって、iPadは初の常時携帯端末だ。そんな斉藤頭取が、「いつでもどこでも、経営に関する情報をリアルタイムに入手できる。iPadは手放せない」と熱を込めて語る。

 北都銀行は取締役や執行役員、本部の部長職といった経営幹部26人に「iPad2」を導入している。携帯電話網の3G回線とVPN(仮想私設網)を経て行内のイントラネットに接続すれば、経営判断に必要な情報をいつでも参照できる。毎週の経営会議の資料もiPadで閲覧する。

 iPadの導入によって斉藤頭取の働き方や日常生活は大きく変貌した。記者は斉藤頭取に密着して、その実態を追った(図1)。

図1●iPadを活用する北都銀行の斉藤永吉頭取
自宅や移動中の自動車内から、経営会議の資料やCRMシステムなどの情報を閲覧している
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自宅でも機密情報が閲覧可能に

 斉藤頭取のiPad活用サイクルは、金曜日に始まる。翌週月曜日の経営会議の資料が、iPadから閲覧可能になる日だ。斉藤頭取をはじめとする経営会議のメンバーは、週末に経営会議の資料を読み込み、週明けの経営会議に臨む。

 2011年12月4日、日曜日。斉藤頭取は平日と同じように、朝の6時に起床した。休日の午前中は、独立して家を離れた長女の部屋を書斎代わりに、iPadを使って資料に目を通すことが多い。

 最初に読み始めたのは、経営会議の議題となる融資案件の中間報告資料だ。資料には融資先企業の情報が記してある。このような機密資料を自宅で閲覧できるのは、iPadにデータが一切保存されない仕組みになっているおかげだ。経営会議の資料を紙ベースで配布していた頃は、機密資料は行内でしか参照できなかった。機密資料を自宅に持ち帰るなど、頭取でも許されなかったからだ。

 斉藤頭取の手元にあるiPadは、行内イントラネットに保存しているデータをVPN経由で表示しているだけだ。もしiPadを紛失したとしても、情報は漏洩しない。

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