iPhone/iPad向け電子教科書アプリ「iBooks2」を発表するなど教育分野への積極的な取り組みを見せる米アップル。これまでサードパーティーの事業者がiPhone/iPadを利用し牽引してきた米国の教育分野に大きな影響を及ぼしそうだ。アップルなどICTベンダーの教育分野における新たな取り組みを紹介する。

 米アップルは2012年1月19日、電子教科書アプリ「iBooks2」、電子書籍作成ソフト「iBooks Author」、世界中の大学の講義を無料で受講できる「iTunes Uアプリ」を発表した。いずれもiPad向けである。同社が教育分野に関して複数の発表を同時に行ったのは今回が初めてとなる。加えて「現在、約150万のiPadが世界中の教育関係の機関で利用されている」と発言するなど、同社は教育分野に積極的に取り組む姿勢を示している。

14.99ドルで大手の教科書が利用可

 アップルの発表を順に見ていこう。最初のiBooks2は、電子書籍の購入および閲覧を行うiOS対応アプリ「iBooks」(2010年4月リリース)の進化版である。今回から電子教科書にも対応した。無料でダウンロードできる。

 iBooks2対応の電子教科書を出版するのは米ホートンミフリンハーコート、米マグロウヒル、英ピアソンの3社。電子書籍配信ストア「iBookstore」で販売する。アップルによればこの3社で90%以上の教科書に対応している。

 ポイントは1冊14.99ドル以下で提供されるという価格の安さだ。例えばピアソンの「Biology」をアマゾンで購入する場合、新品で156.70ドル、中古でも13.12ドルからとなる(2012年2月6日時点、筆者調べ)。

 2番目のiBooks Authorは文章や絵、動画のほか、プレゼンテーションソフト「Keynote」のアニメーション、3Dオブジェクトなどをマルチタッチ操作で楽しめる電子書籍を作成できるツールである。個人が電子教科書を作成することも可能だ。作成した電子教科書はiBookstoreで販売することができ、制作者が価格を設定する。App Storeで提供されているアプリと同様、アップルが売り上げの3割を取り、作成者が7割というビジネスモデルだ。

 最後のiTunes Uアプリは、有名大学の学科コースをiPadやiPhoneで学べるアプリである。英ケンブリッジ大学や英オックスフォード大学、米ハーバード大学、米スタンフォード大学などの講義、課題、教科書、小テスト、講義概要などにアクセスできる。iTunes U自体は2007年5月から提供され、今まで約7億のダウンロードがあったという。今回はその内容などの刷新と専用のiTunes Uアプリを提供するようになった点がポイントだ。

エコシステムの拡大は続く

 こうした動きを見せているのはアップルだけではない。同社がiPadを発売した2010年4月以降、そのエコシステムは着実に拡大しつつある。

 パソコンやiPhone向けの電子教科書を提供していた米コーススマートは2010年4月、iPad向けアプリの提供を開始した。ユーザーは5大教科書出版社などの電子教科書約1万冊(当時)の中から選択し、一定の期間利用できるというサービスだ。同社は紙の教科書の60%引きの価格で電子教科書を購入できることをアピールの一つとしている。2012年2月現在、利用できる電子教科書のタイトルは2万以上に増えている。iPhone/iPadのほか、Android端末向けのアプリ、Kindle Fireや一部のAndroid端末で利用可能なHTML5ベースのWebアプリなどマルチデバイス対応を進めている。

 米国カリフォルニア州にあるベンチャー企業のKnoは、iPadのネイティブアプリや、Webサービスとして電子教科書を展開している。現在15万のタイトルを用意し、紙の教科書の30~50%引きの価格で販売している。Knoはかつて、コンテンツとバンドルした形で自社端末の販売を行っていたが、現在はiPad向けとWebサイト経由でのコンテンツ提供という形態に切り替えている。

 このほか、従来の紙の教科書とは異なる「電子教科書ならでは」のアプリも様々ある。例えば化学の元素記号をビジュアルに見せる「The Planet」、旅行写真家の撮影した世界中の画像と地図をマッシュアップした「Beautiful Planet HD for iPad」、写真で天体について学べる「GoSkyWatch Planetarium for iPad」などだ。こうしたアプリは、今までの紙の教科書とは異なる世界観を子供たちに提供してくれそうな期待感がある。

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