大手ITベンダーの間で、銀行顧客の争奪戦が激化している。本誌の独自取材によって、水面下で進んでいた3件の商談結果が判明した。競合他社の顧客奪取に成功したのは日本ユニシス、NEC、NTTデータだ()。3社の提案に共通するのは、新技術を積極的に採用するなどしてコスト競争力を高めている点だ。

表●担当ベンダーが交代した銀行の新システム
[画像のクリックで拡大表示]

 日本ユニシスは北國銀行から次期営業店システムを受注した。売り込んだのは同社製営業店システム「BANK_FIT-NE」だ。日本ユニシスは北國銀から既に勘定系システム「BankVision」を受注している。北國銀の現行システムは、営業店と勘定系共に日本IBM製。日本ユニシスはダブルでのリプレースに成功した格好だ。

 営業店システムの受注額は推定で15億円程度だ。競合製品のほぼ半額である。BANK_FIT-NEは汎用PCを基に構築しており、大幅な価格下落が可能になった。

 保守性の高さもポイントだった。BANK_FIT-NEは営業店端末上で動くソフトをデータセンターから一元管理できるため、営業店へのサーバー配置は不要である。北國銀は営業店と勘定系共に、2015年1月の稼働を目指す。

 NECはオープン勘定系パッケージ「BankingWeb21」を東京スター銀行から受注した。稼働は2015年以降とみられる。ハード費用の削減や保守スピードの向上といったオープン製品の強みが生きたもようだ。東京スター銀の現行勘定系は富士通製メインフレームで動作する。

 BankingWeb21の採用地銀は4行めとなる。オープン勘定系の分野では、9行が採用する日本ユニシスのBankVisionがトップシェアを誇る。NECは東京スター銀からの受注を弾みに、日本ユニシスを追随する。

 銀行の投資信託システムで8割のシェアを誇る野村総合研究所(NRI)の「BESTWAY」をリプレースしたのはNTTデータだ。同社は、ゆうちょ銀行が入札にかけた投信システムの刷新と稼働後の運用サービスを37億8000万円で落札した。新システムの稼働は2013年5月である。

 NTTデータは得意とする地銀向け勘定系システムの分野でも他社顧客を獲得した。3月30日に北都銀行と荘内銀行がNTTデータの新型クラウド「BeSTAcloud」の導入を発表したが、このうち北都銀は富士通の「PROBANK」からの切り替えだ。BeSTAcloudはマルチテナント型の設計思想が売り物だ。ハードの共用によるコスト削減と個別ニーズへの対応を両立できるとする。

 4月以降、東日本大震災の復興需要や円高緩和などによって、企業のIT投資は回復の兆しを見せるかもしれない。自社顧客を奪われた日本IBMと富士通、NRIにも、巻き返すチャンスはある。

出典:日経コンピュータ 2012年4月12日号 p.14
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。