何が本当の強みか。これを技術面から考え、IT部門改革に生かしたのがミサワホームである。

 「これこそが自分たちの強みだ」と、同社のIT部門が考えていたのは、内製へのこだわりである(図1)。アプリケーションは自分たちの手で一から開発するのが基本。外部に開発を委託したり、外部の製品やサービスを使ったりするのは「技術が空洞化する」と消極的だった。

図1●ミサワホームが実施した改革
新技術でビジネスを効率化することを目的に、内製志向を転換した
[画像のクリックで拡大表示]

 だが内製へのこだわりには問題もあった。第1回で見たように、利用部門には「何をやっているか分からない」と映った。IT部門を率いる宮本部長は利用部門にいた当時、「IT部門は、理由をつけては利用部門に待ったをかける」と感じていたという。

 宮本部長が2011年4月に部長に就任したとき、まず「当社にとって、何が大事な技術なのかを見直す」と宣言した。本当に内製一辺倒でいいのか、ということだ。「IT部門が話を聞いてくれないのであれば、今なら利用部門がクラウドベンダーに頼んで自前でサービスを実現できる。我々は考え方を変えなければいけない時期に来ている」。宮本部長はIT部員にこう説明した。

重視すべき技術を新たに定義

 宮本部長が打ち出したのは、広く一般に知られている技術や製品、サービスを「当社にとって重要な技術」とする方針だ。クラウドサービスやパッケージソフト、オフショア開発、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などを積極的に使うとした。

 その時にIT部門が備えるべき技術力は何か。「外部の技術を組み合わせて迅速に作り上げることができる力。さらに、業務にどう役立つかをリスクを取りながら考えられる力」と定義した。

 当然、部員からは反発の声が上がった。宮本部長はこう説明した。「部員数人が開発し、社員だけでレビューしたソフトと、グローバル企業にいる数多くの開発者が作り、全世界の利用者がレビューするソフトでは、どちらが品質やコスト、機能に優れているのか。よく考えてほしい」。

 外部の技術を使えば、様々なニーズや状況の変化にシステムを柔軟に対応するのが容易になる。何よりIT部員の目が外に向くようになる。宮本部長はこうしたメリットを考慮して、IT部門の“伝統”を捨て去ることを決意した。

 宮本部長は率先して、利用部門にIT部門の変貌ぶりをアピールした。利用部門長には、「我々は利用部門を支援していく存在に変わった。やりたいことや困っていることがあったらどんどん相談してほしい」と訴えた。

 さらに定期的に、利用部門のマネジャーや社員に対してIT部門の方針説明会を実施することに決めた。IT部員は、その場で出席者からシステムの使い勝手や新たな要望を聞く。「説明会の場を利用して、利用部門に顔を売り込めと部員に言った」(宮本部長)。

 こうしたIT部門改革の成果を、10年ぶりの刷新を進めている基幹システムの構築に生かす方針だ。全社のシステム基盤として、NECにプライベートクラウドを発注。その上で動作するアプリケーションは、原則としてクラウドサービスまたはパッケージソフトで構築する。

 2012年1月に稼働したグループウエアはグーグルのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)「Google Apps」を使う。2012年5月から順次稼働する販売代理店向けシステムはNTTデータイントラマートのパッケージ「intramart」を、会計システムはNTTデータビズインテグラルのパッケージ「Biz∫会計」をそれぞれ採用する。パッケージのカスタマイズ作業は、中国・大連のオフショア開発を利用する

出典:日経コンピュータ 2012年2月16日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。