我々が日々活用しているITの世界は、無数のコンピュータとその中で動くOSおよびソフトウエアによって形作られている。そうしたOSやソフトの中には、Windows OSやMac OS Xのようにパソコンを買えば最初から入っているタイプもあるが、ユーザーが自分の手を動かしてインストールしなければならないものもたくさんある。

 本連載は、世の中にあるそうした様々なOSやソフトウエアについて、最新版あるいは定番のものを中心に、インストールに必要な知識や手順を分かりやすく解説するコラムである。「仕事で急にサーバーを立ち上げる必要が生じた」際などはもちろんのこと、「ネットで話題になったあのソフトをちょっと試してみたい」といった軽めのニーズも満たせるよう、できるだけ幅広く紹介していくつもりだ。

 新しいOSやソフトウエアを自分の手でコンピュータに導入し、実際に触ってみることは、性別や年齢を問わず多くの人にとってドキドキワクワクできる体験になりうると筆者は確信している。まだそうした体験をしたことがないという読者の皆さんには、ぜひ本連載を参考に「わくわくインストールの世界」の扉を開け、第一歩を踏み出していただきたい。

Linuxディストリビューション「CentOS 6.2」とは

 連載第1回で取り上げるのは、「The CentOS Project」が開発および配布しているオープンソースの無償Linuxディストリビューション「CentOS」(セントオーエス)の最新バージョン「CentOS 6.2」である(写真1)。

写真1●誰でも無償で利用できるLinuxディストリビューション「CentOS 6.2」
[画像のクリックで拡大表示]

 CentOSは、米レッドハットの商用Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)のソースコードを元に開発が進められている無償ディストリビューションである。企業向けの商用Linuxディストリビューションとして確固たる市場シェアを持つRHELの“互換OS”ということで、主にサーバーを構築したいユーザーを中心に人気を集めている。筆者自身、このCentOSを使って自宅サーバーを構築・運用していることもあり、本コラムの第1回で紹介するのにピッタリのOSだと考えた。

 CentOSのバージョン番号は、元となるRHELのバージョンにならって付けられている。最新のCentOS 6.2ならRHEL 6.2を元に作られているという具合だ。なお、「元に作られている」という記述は、RHELのソースコードから商標(ロゴを含む)や商用パッケージといった知的財産物を除いた形で作られているという意味である。そうした部分を除けば、CentOSはRHELと同等のOSとして利用できる。

 RHELと高い互換性を持つということで人気のCentOSだが、それが故に利用に際して注意が必要な点もある。それは、「最新バージョンがリリースされるタイミングが読みづらい」という点だ。例えば、以前のバージョンであるCentOS 6.1やCentOS 6.0は、対応するRHEL 6.1やRHEL 6.0が出てから半年以上遅れてリリースされていた。ところが、CentOS 6.2についてはRHEL 6.2に遅れることわずか2週間というスピードで2011年12月20日に公開されている。

 同プロジェクトの開発者向けメーリングリストによれば、CentOS 6.2のリリースがこれほど早かったのは、CentOS 6.1を開発する際に準備したものが6.2でもそのまま使えたことなどが理由であると説明されている。一般のユーザーがこうした事情を細かく知る必要はないが、「RHELの最新版がリリースされても、同じ新機能を備えたCentOSが利用できるまでかなり待つことになる可能性がある」という点だけは押さえておきたい。

要求されるハードウエアスペックは比較的高め

 前置きはこれくらいにして、さっそくCentOS 6.2を導入するための準備作業に取りかかろう。今回は連載初回ということもあり、分かりやすさを最大限に優先して、「サーバー構築目的でパソコンにCentOS 6.2だけをインストールして使う」という前提で話を進める。古い機種でも構わないので専用のサーバー機として使えるパソコンを1台用意できており、そのパソコンには新品あるいは中身(OSやデータ)を完全に消去しても構わないHDD(ハードディスクドライブ)が備わっているという状況を想定している。

 パソコンに既にWindowsなどのOSが入っていると、ついそのまま残してLinuxを空き領域に追加インストールし、複数のOSを切り替えて起動できるようにする「マルチブート」を選ぼうと考えがちだが、サーバーとして長時間(あるいは常時)稼働させるつもりなら、以前のOSを残していても結局はほとんど使わずにHDD領域が無駄になるだけの可能性が高くなる(OSトラブル時の復旧作業や緊急利用目的で役に立つケースもあるが、これらは他にも手立てがある)。

 逆にLinuxをちょっと触りたいというだけなら、わざわざHDDにインストールしなくても、最近ではCD/DVDから直接起動させたりUSBメモリーにインストールしたりして利用する方法が十分実用的に使える。そんなわけで、今回はパソコンをLinux専用機に仕立てる方法を紹介するが、WindowsとLinuxをマルチブートする方法やUSBメモリーにLinuxをインストールして使う方法などについてもやはり一定のニーズはあると思われるので、いずれ紹介するつもりである。

 インストール対象とするパソコンについては、古い機種でも構わないとは書いたものの、企業内で今どきのサーバー機を使って本格的に利用することを前提としている最新のRHEL 6.2の互換OSということもあって、それなりに高いハードウエアスペックが要求される。

 まずCPUについては、対応するCPUが「x86系CPUのみ」という点は多くの人にとって問題ないだろうが、加えて「PAE」(Physical Address Extension、物理アドレス拡張)という機能のサポートが必須という点に注意が必要である。米インテルのデスクトップ機向けCPUならまず問題にならないが、他メーカーの互換CPUや、インテル製CPUでもノートパソコンなどのモバイル向けCPUの中にはPAE非対応の製品が一部ある。

 インストール時に要求されるメインメモリーの量が比較的多い点にも注意しよう。リリースノートによると、最低でも「392Mバイト」が必要で、GUI(Graphical User Interface)によるインストールモードを利用するには「652Mバイト」以上が必要だという(それ以下の場合は自動的にテキストインストールモードになる)。今回はGUIインストールモードを使うので(理由は後述)、記事に合わせるなら652Mバイト(一般的なメモリー構成だと768Mバイト)以上搭載したパソコンを用意してほしい。

 なお、本記事ではインストール途中のスクリーンショットを紹介したい関係で、物理パソコンの代わりに仮想マシンへCentOS 6.2をインストールしているが、手順自体は何一つ変わらないので心配は無用だ。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が4月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら