2007年1月に米AppleがiPhoneを初めて披露した時、当時CEO(最高経営責任者)だった故スティーブ・ジョブズ氏は「電話を再発明する」というシンプルな一言で影響の大きさを訴えました。とりわけ携帯電話事業にかかわる多くの人々にとって、これは「壮語」に聞こえたことでしょう。130年に渡って連綿と続く電話の歴史を、たった一つの製品で塗り替えるというのですから。

 しかしこの言葉はすぐに実体を伴い始めます。その後の数年間でIT全体に革新(内部デバイスの性能や無線通信速度の著しい向上、クラウド技術の成熟、ソーシャルサービスの隆盛など)が起こり、また米Googleが開発したAndroidという強力なライバルも登場し機能を競い合うようになりました。こうした背景もあってiPhoneやAndroidを含めた「スマートフォン」は、実際に電話の使われ方やコミュニケーションの形態、そして世界の携帯電話市場における勢力図までも一変させたのです。

 そして今、iPhoneやAndroidの存在によって再発明されている最中のもの、今後されそうなものをリストアップするならば、パソコンやテレビ、カーナビゲーションシステムなどが並ぶはずです(関連記事:世界のスマホ出荷台数がPCとタブレットの合計を初めて上回る、英調査会社)。さらにもう一つ付け加えるとすれば、スマートフォンよりも小さく、より身近な2枚のディスプレイを備えた製品――つまり眼鏡ではないかと、筆者は考えています。

 米国では先日、目下Googleがメガネ型のAndroid端末を開発しているとの報道がありました(関連記事:Googleが「Androidアイウェア」を開発中?(WIRED.jp))。まだ噂の域を出ないものの、似たようなメガネ型のスマートデバイスの存在感は徐々に高まってきています。一部のメーカーが販売しているスキー用ゴーグルは、GPSなどのセンサー類を備えており、ゴーグル内側の小型モニターに標高や気温、滑走速度などを表示できます。

 以上は主に米国の動向ですが、世界有数のメガネ普及率を誇る日本も負けていません。実際にいくつかの企業が、Androidを応用したメガネ型情報機器の開発に取り組んでいます。ISP事業を営むNECビッグローブもそのうちの1社です。同社は2012年2月1日の記者会見で、Androidとクラウドを活用した「クラウド対応メガネ」の試作機を披露しました。筆者はさっそくNECビッグローブを訪問し、次世代のキラーデバイスになるかも知れない情報端末をじっくり体験してきました。

仲間の位置やメッセージを現実風景に重ねて表示

 クラウド対応メガネの試作機は、(1)デジタルカメラと透過型ディスプレイを内蔵したレンズを搭載し、レンズ内に種々の情報を映し出せるスポーツタイプのサングラス、(2)顔認識エンジンやサングラス用アプリケーションなどを組み込んだノートパソコン、(3)サングラス用アプリのリモート操作に使うAndroidスマートフォン――の3点で構成されています(写真1)。(1)と(2)は有線ケーブルで、(2)と(3)はBluetoothで接続されています。

写真1●試作版「クラウド対応メガネ」の機器構成
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 クラウド対応メガネの開発プロジェクトを率いるNECビッグローブ新事業開発本部長の神場知成氏によれば「アプリや顔認識エンジンをスマートフォン側に実装し、スマートフォンとサングラスだけでシステムを組めるよう開発を進めたい」とのこと。試作機のサングラスが有線のインタフェースしか持っておらずPCとしかつなげないこと、PC用に開発された顔認識エンジンを使用しているといった理由から、現時点では(1)~(3)の構成になっています。

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