自社OS「Symbian」の事業売却や米マイクロソフトとの提携など、世界最大の携帯電話メーカーであるフィンランドのノキアが大胆なリストラ策を打ち出している。同社のおかれている現状を鑑みながら、今後の事業戦略について、新端末およびマイクロソフトとの連携の観点から考察する。


 2011年10月20日、世界最大の携帯電話機メーカーであるフィンランドのノキアは第3四半期決算を発表した。売上高は89億8000万ユーロで対前年同期比13%減となり、6800万ユーロの純損失を計上した。

 地域別に見ると、中東およびアフリカで同3%成長した以外は、北米地域の同68%減を筆頭に、欧州(同39%減)、中華圏(同25%減)、アジア太平洋地域(同20%減)、中南米(同7%減)と売上高が軒並み減少した。北米の落ち込みが大きいのは、Android端末やiPhoneの人気、売り上げが高いことの裏付けでもあろう。

 携帯電話機やスマートフォンなど端末の総出荷台数は1億660万台。前年同期と比べて3%減少した。それでもまだノキアの出荷台数ベースでのシェアは世界1位である(表1)。

表1●2011年第3四半期の世界携帯電話機出荷台数にみるメーカー上位5社
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 今回はノキア復活のシナリオとして、同社の短期的な戦略と中長期的な戦略を考察する。前者では新興国向けのローエンドモデル戦略、後者では米マイクロソフトとの「Windows Phone OS」に関する提携について解説する。

新興国向けローエンドモデルで攻勢

 ノキアが今後も注力していく市場として位置付けているのが、新興国向けのローエンドモデルである。この分野は現時点でノキアの携帯電話端末の売り上げの大半を占めている。新興国におけるローエンドモデルでのノキアブランドは健在だ。

 同社は、そのローエンドモデル向けの「Asha」シリーズで新端末4機種を発表した。「Nokia Asha 303」「同300」「同200」「同201」である。2011年第4四半期から2012年第1四半期にかけて出荷を始める予定。価格は303/300が115ユーロ(約1万5000円)、200/201は60ユーロ(約7000円)である。

 これらは、いずれの端末もデュアルSIM対応となっている。多くの新興国では1人が複数枚のSIM(大半はプリペイド)カードを利用していることが珍しくない。そのような新興国のニーズに合致した機能といえる。人口が多く、今後の成長が期待できる新興国市場をターゲットとしたローエンドモデルで4機種を投入してきたことにも同社の意気込みを感じる。

 ただし、ローエンドモデルの市場は端末の単価が安く、薄利多売のビジネスになる。中国やインド、インドネシアなどでは地場メーカーも台頭し、デザインや機能面で見劣りしない端末も多くが市場に出回り始めた。また中古品も多く過当競争の世界である。ノキアが過去から築いてきた新興国でのブランドと品質の良さでこれからも勝負していくのは、以前と比べて難しい環境になっている。

 ローエンドモデルは新興各国の地場メーカとの競争に対抗するための「安くて品質の良い端末」による差別化が必要になる。よりいっそうのコスト削減と「選択と集中」が求められる。実際に同社は、賃金の安いベトナムに工場を建設するなどアジアで積極的に投資を行っている。

 ノキアは当面、携帯電話事業に特化していくことになりそうだ。サムスンなど他メーカーと異なり、売り上げの多くを携帯電話事業が占めているからだ。ノキアの短期的な戦略としてはサムスンやソニー・エリクソン(2011年10月にソニーの完全子会社化)などに対抗してスマートフォン市場で勝負することと、ローエンドモデルで新興国において勝負することの二つがあるが、二者択一というよりは、ハイエンドとローエンドの両方の市場において戦わざるを得ないだろう。ノキアは既に新興国と先進国の両方で市場と顧客基盤を持っている。どちらかに特化するよりも両方のバランスを取りながら事業を展開していくべきだろう。

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