IT技術者にとって、ファシリテーション技術や問題解決手法が重要なスキルとなりつつある。とりわけ、複雑なビジネス課題の構造を解きほぐし、要求や要件を明確化していく「超上流工程」においては必須のスキルと言える。組織間の利害関係を調整しながら、多数の関係者の意見やアイデアを引き出し、取りまとめて合意を形成していく能力が問われるからだ。しかし、これらの知的作業には定番となる方法論や手法が存在せず、個人の能力や経験に依存した「その場限りの進め方」で実践されているのが一般的だ。

 本書のタイトルにもなっている「ゲームストーミング」は、ゲームの要素を取り入れたブレインストーミングという意味だ。ゲームのアルゴリズムと視覚的効果、そして効用を利用して、グループワークを促進させる手法・技術・行為の総称である。本書では、87種類のユニークなゲームストーミングを紹介し、それぞれの「目的」「進め方」「戦略」を解説している。

 付箋紙などを使ったブレインストーミング手法は有名だが、研修やセミナーのワークショップでしか経験がなく、業務やITプロジェクトで実践したことがないという人は多い。しかし、プロジェクト内の課題抽出、施策案のアイデア出し、業務改善の計画立案などのあらゆる場面でゲームストーミングの適用機会はある。評者が手掛けるIT戦略立案のコンサルティングプロジェクトでも、こうした手法を頻繁に活用しているが、通常のヒアリング手法よりもはるかに生産性が高いと実感している。

 カジュアルに楽しみながら進められ、誰もが参画意識を持てるのがゲームストーミングの魅力だ。皆さんの会社では、プロジェクト会議はどのような形態で進められているだろうか。報告が中心で一部の役職者しか発言せず、生産的な議論が展開されていない事態に陥っていれば、本書が紹介するようなゲームの要素を取り入れる価値がある。会議をイノベーティブなものにしたいと思うすべての人に、お薦めの一冊だ。

評者:内山 悟志
大手外資系企業などを経て、1994年にアイ・ティ・アールを設立し、代表取締役社長に就任。ユーザー企業にIT戦略の立案などをアドバイスする。
ゲームストーミング

ゲームストーミング
デイブ・グレイ/サニー・ブラウン/ジェームズ・マカヌフォ著
武舎 広幸/武舎 るみ訳
野村 恭彦監訳
オライリー・ジャパン発行
2730円(税込)

出典:日経コンピュータ 2011年11月24日号 p.148
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