2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北・関東を中心に未曾有の被害をもたらした。企業活動の根幹を支える企業ネットワークにも多くの支障が発生。特に震災直後に始まった計画停電は、広範囲な地域の電力危機という、日本の企業がいまだかつて経験したことのない事態へと発展した。これまで企業が進めてきた事業継続計画(BCP)の盲点が表面化し、多くの企業が根本から見直しを迫られている。

 日経コミュニケーションでは、その実態を具体的に把握すべく、2011年7~8月にかけて上場企業約3200社を対象に「企業ネット/ICT利活用実態調査2011年」を実施した(調査概要は記事末の別掲記事参照)。例年実施している調査だが、本年はこれまで同様の通信サービスの利用状況に加え、震災による企業ネットへの影響、震災を踏まえたBCPの見直し状況などについて尋ねた。

図1●東日本大震災の課題を踏まえて“より強く”なる企業ネット
「重要なサーバーは外部に預ける」「クラウド&モバイルで業務継続」といった動きが加速していることが調査で判明した。
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 大震災を契機にBCPの見直しを進めている企業は4割弱に達した。そして調査結果からは、業務サーバーのデータセンターへの移行やクラウドサービス活用、モバイル環境整備といった取り組みにより、企業ネットワークを“より強く”再生させようとするユーザーの姿が浮かび上がってきた(図1)。

 「4割以上の企業のネットワークに支障が発生」─。アンケート調査では、東日本大震災による企業ネットワークへの影響はこのような結果となった(図2)。今回の調査では、東日本大震災で甚大な被害を受けた地域は対象から除外したため、実際には、被害を受けた企業の割合はもっと高い可能性がある。

図2●東日本大震災による企業ネットの被害状況
4割以上の企業のネットワークに支障が出た。原因の8割近くが震災後の停電による影響だった。
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 企業ネットに支障があった直接的な原因は、地震が44%、津波が15%程度。それらを大きく上回ったのが震災後の停電だ。8割近くの企業のネットワークが影響を受けた。特に計画停電の影響は大きかったようだ。

 コンビニエンスストア向けの弁当、調理パンなどを製造するわらべや日洋は、計画停電の影響を受けた企業の1社だ。「本社がある東京都小平市は計画停電の対象地域になった。本社には全拠点で利用する業務サーバーがあり、業務に支障が出た」(わらべや日洋の大木聡管理本部システム部長)。

 計画停電は3時間だったが、停電前にサーバー類を止め、復旧後に再立ち上げを行ったことから、実際には3時間以上の影響を受けた。「震災後は決算作業がピークになっていたため、決算システムだけは動かしたかった。そこで自家発電装置を使ってサーバーを稼働させ対応した」と大木部長は振り返る。

 航空測量大手のアジア航測でも、震災によって社内ネットワークが影響を受けた。震災直後、東北地方のすべての事業所でネットワークが止まった。通信事業者の中継局が電力を失ったことが原因だった。

 震災の翌日以降、電力の回復とともに東北地区の事務所は復旧した。ただ同社でも、その後の計画停電によって、もっと大きな被害を受けることになった。「川崎市新百合ヶ丘の本社が、全拠点を結ぶネットワークのハブになっていた」(アジア航測の坪井哲也経営管理本部経営情報部長)からだ。結果的に新百合ヶ丘では計画停電は実施されなかったが、東京電力から伝えた予定地域に含まれていたため、実施期間の前にサーバー類をシャットダウン。これによって全拠点の業務がストップしてしまった。

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