「売り手よし」を目指して情報システムを進化させることも、顧客接点の強化に結びつく。システム強化を通じてコールセンターの改善に挑んだパナソニックは、そこで得た顧客の声をマーケティングに活用し、顧客満足度の向上を目指している。「売り手よし」は「買い手よし」と表裏一体だ。社内のムダを省いて顧客と正面から向き合い、それを実証した3社を紹介する。

パナソニック:必須質問は聞き漏らさない

 パナソニックは2011年2月、コールセンターで活用する「問診票システム」を本格稼働させた(図1)。

図1●パナソニックの事業部門が顧客の声(VOC)を活用する仕組み
「問診票」に従って電話応対をすることで、顧客が何に悩んでいるのかが聞き取りやすくなる。そこで得られたVOCを事業部門が分析し、さらに問診票を磨き上げていく
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 商品の故障や使い方の問い合わせなど、同社のコールセンターにかかってくる電話は年間約400万件(写真1)。対象商品や内容は千差万別だ。一方で、電話を受けるオペレーターのスキルにも幅がある。そのため顧客のペースに乗って話を聞くだけでは、問題解決につながらないケースもある。

写真1●パナソニックのコールセンター
写真1●パナソニックのコールセンター
年間に約400万件の電話がかかってくる。エアコンが稼働する夏は特に忙しさが増す

 こうした課題を解決するのが問診票システムだ。DVDレコーダーや洗濯機など7商品群をピックアップして、よくある問い合わせを類型化する。そして、電話を通じて聞き出す標準的な質問を、「問診票」として用意する。

 質問項目は、事業部門とコールセンター部門が定期的に会議を開いて決める。「会話の流れに沿って自然に情報を引き出せるように、質問の順番などを工夫する」とCS本部情報企画グループの指田宗昭グループマネージャーは説明する。ここが「FAQ(よくある質問)」と異なる点だ。顧客の問題を解決するだけでなく、商品改善につながる情報を聞き出すことも、問診票の目的になる。

対応内容を自動でテキスト化

 洗濯機を例に解説しよう。オペレーターが電話を受けると、PC上で「相談受付システム」が起動する。顧客が「黒ずみ」を気にしていると判断した場合は、そのキーワードを入力すると、複数の解決法へのリンクが表示される。該当箇所をクリックすると、問診票システムが起動する。

 問診票システムの画面では、複数の質問に「必須」というマークが貼られ、それに沿って顧客に質問すると、問題点を絞り込める。顧客の回答は、チェックボックスを使って整理する。

 一通り質問し終わると、質問と回答から想定される問題点が画面に表示され、対処法を顧客に説明する。例えば黒ずみなら、洗剤が少ないので適正量を投入すれば解決するといった具合だ。

 顧客の声を、パナソニックはテキストマイニングの手法を使って分析している。そのため、電話対応履歴はすべてテキスト形式で記録する必要がある。

 ここでも工夫を凝らした。問診票を使って問題解決した場合、テキスト入力を大幅に減らせるようにした。システムが自動的に対応内容をテキストデータに加工し、簡単に保存できるからだ。問診票を使えば、分析に必要な質問が網羅できるだけでなく、テキストファイル内の項目も標準化されるため、後で検索しやすくなる。

 問診票を利用しない場合、案内した対処法などを、1回につき800文字程度、オペレーター自らがシステムに入力する。問診票によりデータ入力を省き、浮いた時間を電話応対の拡充に回す。

 顧客の声が商品開発やマーケティングに生かされた例は数多い。「洗濯機では、カタログに縦型とドラム型各々のデメリットを明示している」(指田氏)。両者を比較する問い合わせが多かったため、あえて不利益情報を掲載した。

 コールセンターで適切な解決法を案内できれば、修理件数を減らせる。「何が問題なのか分からないので、とりあえず修理を依頼しよう」という行動が減るからだ。パナソニックにとっては、修理の人件費などを節約できる。

 パナソニックは今後、アフターサービスのWebサイトに問診票システムの簡易版を導入する。顧客に症状を選択させ、質問に答えてもらうことで、修理が必要かどうか判断して回答する。メールでの問い合わせなどと比べ、問題を特定しやすくなると見込む。

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