現在、アップルとサムスンとの訴訟は10カ国、20数件以上に及んでいる。もはや泥沼化していると言っても過言ではない。

 一般的にはこうした特許訴訟の場合、裁判所の判決を待つまでもなく和解するケースがほとんどだ。和解には2つの方法がある。1つは、特許権所有者が侵害した相手に実施を許可する代わりに、ライセンス料を得る契約を結ぶ方法。もう1つは、自社の特許の実施を許可する代わりに相手の別の特許の実施権を得るというクロスライセンスによる和解だ。

 つまり最終的には、何らかの対価を得ることで特許の実施権を与えることが一般的な落としどころとなる。ところが対Androidに関する限り、アップルにはその発想がほとんどないようで、強硬な姿勢を保ち続けている。それが今回、ここまで訴訟が泥沼化した原因の1つである。

簡単な対策はデザイン変更のみ

 この状況を専門家はどう受け止めているのか。日本IBMや調査会社ガートナージャパンに勤務した経歴を持ちソフトウエア関連特許に詳しい弁理士の栗原潔・テックバイザージェイピー代表は「アップルはマイクロソフトなどと比較して他社への特許ライセンスには消極的。ましてや敵であるAndroid陣営に対して塩を送るようなまねをすることはないと考えたほうがよいだろう」と指摘する。

 アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏は、自身の伝記本『スティーブ・ジョブズ』(ウォルター・アイザックソン著、講談社)の中で、どんな手段を使ってでも「Androidは抹殺する」と語っている。その最終目的はAndroid製品の販売停止だろう。和解の可能性は極めて低い。

 では、アンドロイド端末を発売するメーカーは、アップルから訴えられてしまった場合、どのような対策を取るべきなのだろうか。栗原氏は、取り得る対策は次の3つだと解説する。

(a)アップルがライセンスを希望するような極めて強力な自社所有特許を使うことでクロスライセンスに持ち込む

(b)アップルの持つ特許を一つひとつ確実に無効化(新規性や発明性などを否定)していく

(c)アップルの特許に抵触しないよう、インターフェースやデザイン開発を行っていく

 (a)については、そもそもそのような特許があるとは限らない。そして(a)も(b)も上記2つの対策は、ともに膨大なコストと時間が必要となる。

 結局、簡単な方法は(c)しかない。サムスンも、(a)(b)の対策を講じつつ、既に販売禁止の仮処分を受けたドイツやオランダ向けの製品で、デザインやインターフェース関連プログラムに修正を施した。

 ただし出荷開始した後からのデザイン変更やインターフェースの修正では、商品コンセプトに沿ったデザインや統一感のあるインターフェースに基づく高品質なユーザー体験を提供できなくなる可能性も否定できない(写真)。

写真●サムスンのデザイン変更例。ドイツやオランダ向けの製品の変更前(a)と、変更後(b)。真正面から見ると画面しか見えなかったデザインを、真正面から見ても縁の存在が分かるようデザインし直した。この変更ならば、アップルのデザイン特許を侵害しないとサムスンは見ている
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 またアップルは、第2回で解説したバウンススクロール特許をはじめとして、快適な操作を実現させる細かい特許を多数持っている。

 Androidのように、iPhoneやiPadと似た操作体系を採用した場合は、アップルの特許を避けたうえで、より優れた操作体験を実現するのに相当な工夫が必要になりそうだ。アップルとは考え方の異なるデザインや、新しいユーザーインターフェース体系の開発が急務といえる。

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