第1回第2回で説明したように、アップルは分かりやすく強力なデザイン特許やインターフェースに関する特許を活用して、世界中でサムスン製品の販売停止を求める仮処分を申請している。一方、このアップルの攻勢に対するサムスンの反撃の内容も分かってきた。

「誰もが思いつくもの」とサムスン

 ここまで本誌は、アップルが対サムスン用の仮処分申請で活用した特許は、主にiPhoneやiPadの外観に関するデザイン特許と、同社が持つインターフェース特許の中でも、特にシンプルで分かりやすいものだと解説してきた。これに対しサムスン側は(反論の一部がまだ公開されていない部分もあるが、公開された証拠を見る限り)アップルが持つそれら権利の「シンプルさ」の部分を狙って反撃に出ているようだ。

 米国でアップルが起こした仮差し止め請求に反論するため、サムスンが証拠として提出したのが、以下の写真だ。例えば写真1は1981年に米国の新聞社が発表した、電子書籍端末を思わせる電子新聞のプロトタイプ。この新聞社はその後、1991年に別のプロトタイプを発表(写真2)。開発プロジェクトにはアップルの関係者もかかわっていたと言う。

写真1●サムスンが証拠として提出した、米国の新聞社が1981年に発表した電子新聞のプロトタイプ
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写真2●同じ新聞社が1991年に制作した電子新聞のプロトタイプ
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図1●「iPhoneに似たデザインもすでに多数存在」とサムスン
サムスンはLG電子のプラダフォンを例に出し、iPhoneこそプラダフォンの真似と主張したようだ(左)。そのほか、日本や韓国のさまざまなメーカーの登録意匠を引き合いに出し、iPhoneのデザインパテントの無効を訴えた(右)
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 サムスン側はこのほか、「2001年宇宙の旅」などの映画に登場した端末も証拠として提出して(写真34)、iPadのようにシンプルな板状の端末はiPadが登場する前にすでに数多く存在していたと主張。iPadのデザインには新規性がないことを理由に同社のデザイン特許の無効化を狙っている。そしてサムスンはiPhoneのデザインについても、過去多くのメーカーが発売した既存の製品や過去のデザイン特許を証拠として提示して(図1)、アップルのデザイン特許の新規性を覆す作戦に出た。

写真3●映画「2001年宇宙の旅」の中に出てきた端末も、サムスンは証拠として提出した
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写真4●サムスンが証拠として提出した、英国で1970年代に放送されたテレビシリーズ「The Tomorrow People」に登場したタブレット端末
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図2●サムスンによれば「インターフェース特許も既出」
アップルが強力なインターフェース関連特許と主張する「バウンススクロール特許」についても、写真のような既存の事例(詳細はhttp://www.cs.umd.edu/hcil/mobile/を参照)があるとサムスンは主張。リストを指でスクロールさせているときにリストが端に到達しても、指で画面をタッチしている間は指に合わせてリストが付いてきて、指を離すとリストの端が画面の端に戻るという仕組みを、このインターフェースがすでに実装していると言う
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 サムスンの反論は、インターフェース関連の特許についても同じ考えに基づいて行われている。第2回で詳細を解説した、画面が指に吸い付くような印象を与えるために欠かせない「バウンススクロール特許」についても、サムスンはiPhone以前に発表された研究事例を発掘して反論してきた(図2)。

 アップルの特許はどれもシンプルで分かりやすいもの。それだけにそのデザインは誰もが思いつくものであると、サムスンはこれらの証拠を多数集めることで主張しようとしているようだ。近日中にも米国で仮差し止め請求に関する判決が下される。サムスンが提出したこれらの証拠がどのように判断されるか、注目が集まる。

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