「こんばんは。夜分遅くにお邪魔いたします」。2010年8月のとある夜。オイシックスの高島宏平代表取締役社長は、都内のマンションの一室を訪問した。モバイル事業部の岸本綾事業部長と、同部に配属された新入社員の石橋宏子氏が同行する。

 部屋の主は同社の若い女性顧客。パソコンではなく、携帯電話などのモバイル機器で注文する顧客の中からこの女性を任意抽出し、自宅での1時間程度のインタビューを依頼した(写真1)。

生活空間で顧客像をつかむ

写真1●顧客の自宅を訪問し、生活環境に身を置いて話を聞く
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 今回のインタビューの目的は、モバイルの顧客像を把握し、ニーズを聞き出してサービス改善に反映することだ。高島社長のリードでインタビューが進み、顧客のプロファイルや利用動機が明らかになっていく。「オイシックスを知ったのは、メールマガジンの広告です。今まで食材の宅配サービスを使ったことはありません。珍しい野菜が買えるのがうれしい」「一人暮らしですが料理は好きです。デパートの食品売り場にもよく行きます」

 質問は徐々に「なぜモバイルを使うのか」という核心に近づいていく。

 「パソコンのサイトは使ったことがありますか?」「あるけど見づらかった。見たいページをなかなか探し当てられない」「モバイルのサイトはどのくらいの頻度で見ますか?」「ほぼ毎日。注文しない時も暇があると、何となく見ちゃいます」「私たちのお客様には、モバイルで購入する方はまだ多くないのですが、モバイルショッピングに抵抗はありませんか?」「全然。結構何でも携帯で買いますよ。逆にパソコンで買うことはめったにない。友達も皆携帯でショッピングしているし、オイシックスを使っている子もいます」「お友達もパソコンはあまり使わないのでしょうか?」「というか、そもそもパソコンを持っていない人が多いですね。私も友達のパソコンのメールアドレスはほとんど知りません」

 こうした言葉でのやり取りに加え、生活空間の観察が顧客像を鮮明に描くのに役立つ。1DKの部屋はシンプルなインテリアで整理整頓されていたが、キッチンの棚には調味料や香辛料がずらりと並んでいた。「本当に料理が好きなんだなあと思った」。インタビューに同行した石橋氏は振り返る。一人暮らしでも料理を楽しみ、携帯電話を駆使して情報を集めて友達と交換する。顧客像は徐々に具体化し、訪問した3人の共通認識となっていく。

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