インターネットは全体の管理者を置かず、複数の接続事業者がそれぞれの管理範囲内を運用するという自律分散が身上だ。部分的なトラブルはよく起こるが、ネットワークの全体は壊れにくくなるように設計されている。本書はこうしたインターネットの“ゆるふわ”な特性を、実際に起こった障害と復旧のいきさつから浮き彫りにしようと試みている。

 通読すれば、海底ケーブルなどの物理レイヤーから本誌読者にはおなじみのレイヤー2/3、そして規格化などの政治“レイヤー”まで、インターネットの構造を総合的にとらえられる。技術書ではなく読みものとして考えられており、専門家でなくても「わかったつもりになれる」くらいの難易度になっている。

 逆に、「本格的に技術を学びたい」人には、本文だけでは足りない部分もあるだろう。その場合は、巻末に収録された豊富な文献とインターネットからの情報収集法を紹介した付録を参考にしよう。文献の原典に当たり、自ら手を動かして情報収集することで「わかったつもり」を「わかった!」に変える手助けをしてくれる。大学の良質な教養課程の授業を受けている気にもなる一冊だ。

インターネットのカタチ

インターネットのカタチ
あきみち/空閑 洋平著
オーム社発行
1995円(税込)

出典:日経NETWORK 2011年8月号 p.85
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