1. アジャイル風の手法で限定版のシステムを開発し、機能要件を確定
2. 実装を優先した結果、コードを2回捨てることになった
3. OSSの採用やアプリケーション仕様の抑制でコストを抑えた
図1●MONEX VISION βの概要
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図2●プロジェクトのスケジュールと課題、対策
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 マネックス証券は、約130万ある口座の保有者に長期分散投資の視点から資産設計をアドバイスするシステム「MONEX VISION β」を1年弱で構築、2010年10月1日にリリースした。クライアントにWebブラウザーとFlashプレーヤーを用いる、RIA(Rich Internet Application)型のWebアプリケーションである(図1)。

 このプロジェクトには、課題が二つあった(図2)。

 一つは、機能要件がすぐには決まらないにもかかわらず、短期間で構築すること。開発メンバーは作業を進めるうちに、その課題にはアジャイル風の手法が有効なことが分かり、限定版の開発に適用した。限定版で機能要件が確定したので、公開版はウォーターフォール型で開発を進めた。こうすることで「要件を誤って認識したまま開発を進め、終盤で大幅な手戻りが発生するということは皆無だった。不安を持たずに作業に集中できたことが、驚くほどの工期短縮につながった」(開発リーダーを務めたサイオステクノロジー クラウドソリューション部 ソリューション第1グループ テクニカル・スペシャリスト 平松寛司氏)。

 もう一つは、システムがどの程度使われるか分からないのでコストを抑えつつ、可用性やセキュリティ、拡張性などの厳しい非機能要件を満たすこと。この課題には、OSやミドルウエアなどにオープンソースソフトウエア(OSS)を活用したほか、アプリケーション仕様を抑えることなどで対処した。

手探りで開発進める

 システム開発プロジェクトの責任者を務めたマネックス証券の飯田敦氏(先進サービス企画室長)は、「一口に長期分散投資といっても、保有している資産は一人ひとり異なる。各顧客の資産クラスを分析し、きめ細かくアドバイスするツールを提供することによって、資産を当社に集めることを目標にしている」と、提供のねらいを説明する。システムの名称に「β」の文字が付いているのは、顧客が望むツールに育てたいとの気持ちの表れだという。

 長期分散投資の金融モデルはいくつもあり、プロ向けには多様な支援ツールが存在する。しかし、一般の個人投資家向けで成功しているツールは皆無に等しい。そこでマネックス証券は、独自にツールを作成することにした。

 多数ある金融モデルのうちどれを採用し、どのレベルで切り出せばよいか議論を繰り返した。そして、古典と最先端の金融モデルを組み合わせたデモプログラムをMicrosoft Excelを用いて作成した。

 飯田氏らは、デモプログラムに埋め込んだ自分たちのアイデアが顧客に受け入れられるかどうか、システム化して確かめることにした。そこで、そのデモプログラムとRFP(提案依頼書)をITベンダー数社に提示し、2009年10月に開発パートナーを選定した。

 手探りで開発を進め、2010年1月に利用者100人を対象に限定版のβ1をリリースした(図2上)。すると、利用者の80%が「参考になった」、72%が「また使いたい」と感じるなど、利用者から極めて大きな反響があった。飯田氏らのアイデアが顧客に受け入れられることが判明した。

 その後、β1の利用者の声を基に機能拡充を図ったβ2を開発し、利用者を1000人に広げて2010年3月にリリースした。β2では、利用者の声の大半は機能面ではなく操作性の改善要望だった。そこで、機能要件についてはβ2で確定とし、以降は約130万の口座の保有者全員が使える公開版を構築することにした。

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