日本放送協会(NHK)は、地図上から地域映像を探して視聴できるWebサイト「NHK映像マップ みちしる」を、2011年7月27日から提供する。同サービスは、受信料をもとに制作されたNHKの映像資産「NHKアーカイブス」を社会に還元する活動の一環として提供する。

 NHKではこれまでに、映像資産を社会還元する活動として、太平洋戦争体験者へのインタビュー映像を集めた「NHK 戦争証言アーカイブス」や、視聴者が映像を使った表現・創作活動をする際に使える映像や音声の素材を提供する「NHK クリエイティブ・ライブラリー」の提供を始めており、今回のみちしるの提供開始で、元々予定していた社会還元シリーズ3サイトがひと通り揃うことになる。ちなみに「みちしる」というサービス名は「道しるべ」にちなんだもので、これに加えて「道を知る」「未知を知る」といった意味を含ませているという。

震災による提供延期中に追加した交流機能

 当初、みちしるは2011年3月18日にサービス提供を開始する予定で準備作業を進めていた。ところが3月11日に東日本大震災が起き、準備していたクリップの約4分の1が被災地域の映像だったことから、被災者に与える影響を考慮して提供開始時期を延期した。サービスを延期している間に、同じ地域映像を視聴した利用者同士を繋げる仕組みを提供できるのではないかと考え、採用が決まったのが利用者からの画像投稿機能である。利用者が動画グリップに関連した画像を投稿するとコメントスレッドが作られ、利用者同士がそのスレッドでコミュニケーションできる。画像投稿機能は2011年秋から提供予定である。

 みちしるのWebサイトは6月末時点で開設されていないが、筆者はNHK局内でデモ用に用意されたサービスを試用した。まずサービスのトップページにアクセスすると、赤いマークが散らばった日本地図が画面一面に表示される。背景の地図データはGoogleマップのデータを利用しており、拡大、縮小、画面移動などは通常の地図サービス同様に操作できる。地図上にある赤いマークをクリックすると、その場所に関連のある動画クリップを視聴できるという仕組みだ。

 地図上に配置された赤いマークには、丸いものと菱形のものの二つの形状があり、中に数字が表示されている。丸いマークは、内容のすべてがその地域に関連した映像クリップがあることを示し、菱形のマークは複数地域を紹介した映像クリップの一部がその地域に関連していることを示している。マーク内の数字は関連する映像クリップの数で、数が多いほど地図上の赤いマークのサイズも大きく表示される。

各クリップは番組素材の再編集版

 みちしるで提供する映像クリップは、NHKで放送した番組素材を使って新たにWebサービス用として3分程度に短く再編集したものである。番組映像からBGMを外してナレーションも新しく入れ直すことで、極力権利処理不要でネット配信できるクリップとして作り直している。配信映像は640×360画素、符号化方式はH.264/AAC、配信ビットレートは500kbpsで、全画面表示はできない。サービス開始時はパソコン向けに提供するが、今後スマートフォンやタブレット型端末のWebブラウザーからアクセスした場合も問題なく利用できるように調整する予定である。

 地図上の赤いマークは、「名所」「温泉」「鉄道」「祭」「趣味」など、あらかじめ準備されているテーマごとに絞り込んで表示することもできる。「発見動画」機能は、ボタンを押すごとに提供中のクリップからランダムに選んだものを視聴できるもので、明確に探したい映像がなくても気軽にサービスを楽しめるような工夫を盛り込んだ。またミニブログのTwitterとも連携しており、興味のあるクリップを見つけた時に、みちしるのサービス画面内に設置されたボタンを押すだけでTwitterで紹介することができる。

 地図上の赤いマークは、映像クリップにタグ付けされた緯度経度情報を基に表示される。この緯度経度情報は、手入力という。マークの表示場所は正確な撮影場所を示している場合と、撮影場所の代表的な場所としておおよその位置を示している場合がある。これは「ドキュメンタリー番組の映像で個人宅が写り込んでおり、場所を特定することがふさわしくない」「一般には知られていない名勝を撮影したもので、場所の特定により訪れる人が急増すると景観を損なうおそれがある」──といった個別の事情に対応するためである。正確な撮影場所を示しているマークには、マークの下にピンの針をモチーフにした引き出しマークが飛び出しており、区別できるようにした。

 NHKでは今後、みちしるをアーカイブス資産の還元用途だけでなく、地図と映像クリップを連携させるプラットフォームとして活用していくことも検討している。例えば紀行もののシリーズ番組と連携して、番組の進行に合わせて関連映像をみちしるで紹介していったり、各地域の放送局が保有する地域色豊かな映像を配信するといった用途が検討されているという。

 また、配信クリップの二次利用についても、公共団体向けの提供や、NHKエンタープライズを窓口とした民間企業に対する提供なども検討している。

出典:日経ニューメディア 2011年7月4日号 12-13ページより
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