写真1●KIPPが導入した「Cr-48」
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 全米に109カ所の学校を抱える公立教育機関のKIPP(the Knowledge Is Power Program)が導入したのは、商品版のChromebookではなく、正確には「Cr-48」と呼ばれる、Chromebookの前身となる試験評価用の端末である(写真1)。

 KIPPは米グーグルの誘いを受け、Chromebookの試験ユーザーとして、2011年2月にCr-48をロサンゼルス地区のミドルスクール2校に200台ずつ、合計400台導入することになった。各ミドルスクールでは、8教室にそれぞれ25台ずつを配備した。

評価機の違いはシングルコアであること

 「商用版のChromebookがデュアルコアのCPUを採用しているのに対し、Cr-48はシングルコア」(KIPP LA校でシステムを担当するマシュー・ペスケイ氏)という点を除けば、Cr-48の仕様は6月中旬に米国などで発売された米サムスン・エレクトロニクス製の「Series 5」のWi-Fiモデルとほぼ同じである。ハードウエアとしては12.1インチ型の表示装置、インテル製CPU「Atom」、2Gバイトの内蔵メモリー、16GバイトのSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)を搭載する。

 Chromebookのソフトウエア面での特徴をここで改めてまとめてみよう。Chromebookは、OSとしてChrome OSを採用しており、すべての作業はChromeブラウザ上で行う。起動時間が8秒程度と短く、起動時にOSを含めて最新のソフトウエアにアップデートするため、基本的にメンテナンスは不要である。ローカルでキャッシュするデータの暗号化や、Webページやアプリの特定領域(サンドボックス)での実行などのセキュリティ機能を備えるため、ウイルス対策ソフトウエアも要らない。

 KIPPにおけるChromebookの活用場面は、授業における学生の学習教材用としてである。同校では、2010年夏からグーグルのGoogle Appsを活用した授業を行っていた。先生がGoogle Appsで作成したオンライン教材を生徒が見るするだけでなく、生徒自身が撮影、編集した映像を「YouTube」にアップロードしてほかの生徒と共有する。あるいは、「Googleカレンダー」によって、宿題のスケジュールを伝えるといった使い方である。

従来型の課題はソフトウエアの更新

写真2●ログイン画面
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 同校が、この用途として当初から利用していた端末はMacBook。MacBookを利用するにあたって最大の課題が「ソフトウエアの更新などに手間がかかること」(ペスケイ氏)。更新が必要なソフトウエアは、端末側だけでOSやOfficeソフト、ウイルス対策ソフトなどがある。これらを更新しようとすれば、スタッフがパソコンを並べて一斉に更新作業をする必要があった。

 Chromebookの導入にあたり、関係者が感心したのはセットアップ作業が簡単に済んだことだったという。「箱から取り出して電源を入れ、無線ネットワークを選んで、自分のアカウントでログインするだけで、アプリやブックマークなど個人が設定したシステム環境に入ることができる。この作業時間は5分程度」(ペスケイ氏)。

写真3●端末の保管用ロッカー
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 授業においては、起動時間の短さがさらに魅力的に映ったという。「先生の指示を受け、即座に使えるという感覚だ」(ペスケイ氏)。同校ではコンピュータの操作そのものを学ぶのではなく、教科書や先生の説明を補助する“副教材”のような位置付けでパソコンを使っている。

 授業では、生徒たちは先生の指示に従ってコンピュータを開いてログインし(写真2)、自分のシステム環境を取得してオンライン教材を閲覧したり作業する。教材を利用した後は閉じる。これらの繰り返しだ。「先生の指示に従って電源を入れてログインすれば、数秒で利用できる魅力は大きい。従来型の“アナログ授業”と、パソコンやインターネットを使った“デジタル授業”をうまく融合できる」(ペスケイ氏)。

写真4●Chromebookのマネジメントコンソールで管理できる項目
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 端末に個人データが入っていないせいか、端末の管理は比較的緩いようにみえる。「教室内に置いた、わずか110ドルのロッカーに保管している」と、ペスケイ氏は笑って説明する。普段はこの教室内のロッカーにパソコンを保管しておき、学生に貸与する形をとる(写真3)。ロッカーは改造して夜間に充電できるようにしている。夜間にフル充電しておけば、日中には充電することなく利用できるという。

 Chromebookのユーザーは、学校を含むビジネス向けのサービスプランを使えば、マネジメントコンソールが手に入る。このマネジメントコンソールを使うと、各端末の利用状況をすべて見ることができる(写真4)。