写真1●KIPP LA校の外観
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 米グーグルの「Chromebook」の販売が、2011年6月中旬から米国、英国、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、スペインで始まった。Chromebookは、グーグルの「Chrome OS」を搭載し、Webブラウザ「Chrome」によるWebアプリケーション利用に特化したノートパソコンである。約8秒の高速起動、OSを含むソフトウエアの自動更新、セキュリティ侵害からの自動復旧などの機能を備えている(関連記事:Chromebookとは)。

 ユーザーの評価は、まさにこれからという段階だが、いち早くChromebookを試したユーザーがいる。その一つが米国の公立教育機関のKIPP(the Knowledge Is Power Program)だ(写真1)。米国出張の際に、KIPPロサンゼルス校を訪問する機会を得たので、本特集では、その利用シーンと効果、従来の利用環境との比較を紹介する。

進学率向上のためにカリキュラムにITを活用

 まず、KIPPについて簡単に紹介しよう。全米20州とワシントンD.C.に、合計109カ所の学校を持つ組織で3万2000人の生徒を抱える。比較的所得が低い家庭の子どもを対象に、大学など高等教育機関への進学率向上に力を入れている。

 今回訪れたKIPP LA校がある東南ロサンゼルス地域も、富裕層が住むことで知られるUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)があるウエストウッドやハリウッドとは市街地を挟んで反対側にある場所で、経済的にはあまり恵まれていない家庭が多い。同校の資料によれば、大学への進学率は10%、卒業者の比率は4%ほどという。目標の一つは、この進学率を向上させることである。

写真2●授業の様子
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 広報担当のジェリーナ・ドビック氏によれば、同校の学習カリキュラムは「バラエティに富んでいる」という。米国では州ごとに履修基準があるものの、学校ごとの裁量が大きい。「何を教えるか」には基準があるが、「どう教えるか」については学校ごとに特色を打ち出せるというのだ(写真2)。そのような同校にとってITは、「学習レベルをさらに引き上げる」ための格好のツールと言うわけである。

 IT分野の取り組みの一つが、クラウド上の情報共有サービスGoogle Appsの活用。同校では、2010年夏に導入し、ドキュメント共有やカレンダー機能などを活用してきた。例えば、Google Apps中の文書共有サービスである「Googleドキュメント」により、先生が作成した教材を生徒が閲覧するだけでなく、生徒自身が編集した映像をほかの生徒と共有する。あるいは、Web上のカレンダー機能「Googleカレンダー」により宿題の進捗を管理するなどといった使い方である。

 ITに詳しい一部の先生は、Google Apps上にオンライン教材を作成し、学生が閲覧、投稿できるようにしている。今回の取材で、代表例として紹介してもらった歴史担当のサンダース先生のページを見ると、授業の補助教材、課題の進捗管理、宿題の伝達などに使っていることが分かる(写真3)。生徒自身が作った映像もYouTubeで共有している。

写真3●歴史担当教諭のジェームス・サンダース氏が作成したオンライン教材
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MacBookでは台数不足、そのときグーグルから誘いが

写真4●IT担当のマシュー・ペスケイ氏(左)とジョシュ・キノシタ氏
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 このオンライン教材を利用するために学生が使う端末としては、主にMacBookだったという。従来の環境の課題の一つは、まず台数が圧倒的に足りないこと。全校で保有する50台(一部はWindowsマシン)のうち、生徒に割り当てられるのは30台ほど。仮に、端末を大量導入したとしても「ソフトウエアの更新などに手間がかかる」(同学校でシステムを担当するマシュー・ペスケイ氏、写真4の左)。端末が搭載するソフトウエアを更新する際には、スタッフがパソコンを並べて、一斉に更新作業する必要があった。これでは、保有し続けるためのコストと時間がかかりすぎると考えていた。

 そんな折、Google Appsの利用で縁があったグーグルから「使ってみないか」と持ちかけられたのがChromebook。話によれば、ロサンゼルス地域の学校に400台を割り当ててくれるという。同校では、2011年2月からChromebookの前身となる「Cr-48」と呼ばれる試験端末の導入を始めることになった。グーグルは、KIPPのほかにも20企業・団体ほどの試験ユーザーを公表している