ウィプロ、インフォシス・テクノロジーズといったインドIT大手は、欧米市場と勝手が違う日本市場を攻めあぐねていたが、大型案件の受注が続くなど、風向きは変わりつつある。日本のユーザー企業が海外拠点のシステムを強化する需要を取り込むことに成功し始めた。ユーザー企業の海外需要拡大の波に乗り、海外事業の売り上げを伸ばしたい国内ベンダーにとっては、頭痛の種である。

 企業買収や現地法人の設立などによって、日米のITベンダーが優秀な技術者をこぞって確保しようとしているインド。ここを本拠地とするのが、ウィプロとインフォシス・テクノロジーズ、そしてタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)のインドIT大手3社だ。英語が話せる技術者を大量動員できる強みを生かし、大手3社は欧米企業から次々とシステム運用などのアウトソーシングを受託、成長を重ねてきた。

 世界各国で成功を収めたインド大手3社にとって、唯一といっていい誤算が日本市場だ。各社は売上高の8~9割を欧米市場向けが占める偏った収益構造の改善を目指し、日本市場の顧客開拓に取り組んできた。ところが日本語の壁や商習慣の違いなどから、なかなか大型受注につながらなかった。

 しかしここにきて、グローバル化を意識する日系企業が、インドのITベンダーの活用に目覚め始めた。ウィプロとインフォシス・テクノロジーズの2社が大型案件を獲得し始めたのだ。

【ウィプロ】世界3極でのSAP運用を全面委託

 インド・プネの郊外。ここにインド3位のウィプロがサービス拠点「プネ・デベロップメント・センター2(PDC2)」を構えている(写真1)。

写真1 OKIデータにおける日米欧の基幹システムを運用しているウィプロの「プネ・デベロップメント・センター2」
写真1 OKIデータにおける日米欧の基幹システムを運用しているウィプロの「プネ・デベロップメント・センター2」

 東京ドーム4.4個分がすっぽりと収まる約20万平方メートルもの広大な敷地に、複数のオフィスビルが建ち並ぶ。ウィプロはPDC2に次々と新棟を建設しており、「すべて完成する4年後には合計で3万8000人を収容できる大規模拠点になる」(ウィプロのアニル・サマント ゼネラル・マネージャー)。

 PDC2の敷地内にあるビルの一つに「フレックス・デリバリー・センター」と呼ぶアプリケーション運用サービスの専用ルームがある。ここでウィプロはOKIデータが日米欧の世界3極で使う基幹システムを24時間体制で運用している。

大型受注で、インドブーム到来の可能性

 世界中でプリンターを販売するOKIデータは、日本と北米、欧州にそれぞれ、生産計画や販売管理などを担うシステムを導入している。いずれも独SAP製ERP(統合基幹業務システム)パッケージで構築したものだが、3極の開発・運用体制はバラバラだった。この問題解決を担ったのがウィプロだ。OKIデータはウィプロに3極の基幹システムの開発と保守、運用を一括委託することで、3年間の総コストを3割減らせるメドをつけた。

 OKIデータがウィプロへの委託を開始したのは2010年4月だ。これに先駆け、ウィプロの支援を受けながら、運用手順の標準化などに取り掛かった。「この作業に要した期間は約6カ月。ものすごいスピード感だった」と、OKIデータの福岡広行プロジェクト・マネージャは驚く。

 ウィプロがOKIデータのような大型受注を日本で獲得した意義は大きい。日本市場では実績が重視されるからだ。こうした案件が増えると日本でもインドブームが巻き起こる可能性がある(表1

表1 インドの大手ベンダーの事業規模と日本市場での取り組み
表1 インドの大手ベンダーの事業規模と日本市場での取り組み

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