「BPOの品質確保には、サービスを継続的に提供してもらえる仕組みが欠かせない」。投資顧問会社、ピクテ投信投資顧問の小澤義彦チーフ・オペレーティング・オフィサー(COO)はこう強調する

 投資信託業務を営む同社は毎日、株式投資信託の基準価額を全国紙に掲載する。「掲載の遅延や基準価額の誤りは絶対に許されない」(小澤COO)。ピクテは投資信託業務を効率化するため、この基準価額の計算業務を2004年からNRIに委託してきた。

 一方、国内拠点で複数の企業から基準価額の計算業務を受託する野村総合研究所(NRI)は、2008年から大連でも計算業務を提供しはじめた。目的は高い品質のまま長く基準価額の受託サービスを提供するためだ。大連では基準価額の計算のような金融サービスのBPOはまだ少なく、金融の専門家を育てても日本のように他社に引き抜かれることが少ない。

 移管にあたって、大連の拠点には「国内拠点のプロセスやシステムに加え、基準価額が合わないときの問題解決や数字の独特の読み方といった担当者のノウハウをそっくり移した」(BPOを提供するNRIプロセスイノベーションの内藤利明戦略マーケティング部長)。大連のオペレーターの訓練には1年を費やしたという。

図5●野村総合研究所におけるBPOサービスの提供の流れ
大連拠点の作業の進捗を監視し、異常時には国内拠点が作業を引き継ぐ。
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 仕組みをそっくり移した上で、大連BPOチームによる作業の進捗を1時間ごとにメールで国内拠点の責任者に飛ばす仕組みを整備した(図5)。ネットワークのトラブルや災害などによってこのメールが途絶えたら、「国内チームが業務を引き継ぐ」(内藤部長)ためだ。

 NRIから大連移管の提案があったときにピクテの小澤COOは「サービスを安定的に受けられなくなるのではないか。もしそうなら金融機関としては受け入れられない」と考えたという。とはいえ投資信託業務の更なる効率化も進めなければいけない。ピクテはNRIのリスク管理の体制を聞いた上で、実際に目で見て確かめることにした。

 2009年、ピクテは経営層と業務部門が大連を訪問。実際に目で確かめてNRIの事業継続の仕組みなどを評価した。その後、大連への移管を決めた。小澤COOは「欧米の金融機関がインドのBPOを利用するように、当社も大連のBPOを活用して競争力を強化したい」と意気込む。

出典:日経コンピュータ 2011年3月3日号
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