各社が大連拠点から日本向けに提供するサービスの内容は、経理財務、人事総務、コールセンター、購買調達などが中心だ。このほか、保険商品やクレジットカードの申込書の入力代行、投資信託商品の基準価額の計算といった、業種特化型の業務サービスを提供する企業もある。

写真5●BPOサービスを手掛けるインフォデリバで最も大きいBPOルーム
400人がデータ入力業務をこなす
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 例えばインフォデリバは、通販会社のカタログ作成、結婚式の席次表作成なども請け負う(写真5)。大連でBPO事業を率いる同社のカク・ウンサン取締役は「社外に切り出せる業務であればどんなものでも請け負える」と言い切る。

 提供サービスが広がるにつれて、より難易度の高い仕事を請け負うようになりつつある。中国人のオペレーターが日本語で顧客企業の従業員と話す、オペレーターが処理内容を選択・判断して業務を進める、といった作業である。特にIBMやアクセンチュア、インフォデリバなどの大手は、業務プロセスの改善や受託前後の業務効果の測定・改善コンサルティングなど、より付加価値の高いサービス提供に注力している。

表2●大連のBPOサービスを利用するユーザー企業の例
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 サービス拡充に伴い、それを利用するユーザー企業も増えている(表2)。なかには、自ら事務処理拠点を設ける動きも出てきた。野村証券は今年5月、大連に自社専用のBPOセンターを新設し、現地子会社の野村信息技術に運営を任せる。同センターは日本語での処理が必要な事務サービスのメイン拠点との位置付けだ。これまでは従業員1000人規模の国内子会社に口座開設申込書の入力業務や営業店の経費精算業務を集約してきたが、まずは口座開設処理を大連に移管する。夏からは経費処理も移し、最終的には国内子会社の業務のうち最大7割を大連センターにシフトする。現地要員は年内に200人、2012年末には500人規模に拡大する考えだ。

 野村証券が大連にBPOセンターを設ける狙いはコスト削減だ。同社の田中CIOは、「5年間で50億~60億円の削減を目指す」と述べる。BPOサービスを利用するユーザー企業に共通するのは、コスト削減が狙いということである。各社への取材を総合すると、大連へのBPOによって事務処理コストは平均3割下がるという。

 ただしコスト効果を得るのは、ユーザー企業にとって、いわば当たり前のことだ。ユーザー企業の多くは、コスト以外の目標も掲げる。それらは主に三つに集約できる。業務品質の向上、業務スピードの向上、リソース不足の解消だ。これら三つの狙いに沿って、ユーザー企業とサービス提供者による工夫の凝らし方を見ていく。

出典:日経コンピュータ 2011年3月3日号
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