「今後世界で広がる近距離無線通信(NFC)は、これまでノウハウを培ってきた日本のプレイヤーにとってチャンス」。2011年3月上旬に東京都内で開催された展示会「IC CARD WORLD 2011」(写真1)に参加したNFC事業の関係者は、こう口をそろえた。

写真1●3月上旬に開催された「IC CARD WORLD 2011」
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 NFCは、ICカードやモバイル機器向け近距離無線通信の規格名称である。実サービスの広がりを受けて定められた後発規格なので、国内で広く使われているFeliCaの通信機能を包含する。両者の関係は少々複雑なので詳しくは次回で説明するが、「Suicaなど既存のFeliCa対応カードの情報を、NFC対応端末で読む」「NFC対応機とFeliCa対応機との間で情報を共有する」といった利用が可能になる。ただし端末やカードの組み合わせによっては、実現できない通信もある。

 NFCの特徴はいくつかあるが、面白い点の一つが「モバイル端末との組み合わせによって、リアルとネットの世界がつながること」である。

写真2●FeliCa/NFC対応の体重計やテレビなどの提案が相次ぐ
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 実社会の中のある場所、ある場面でモバイル端末をかざす、あるいはタッチすることで、その場所固有の情報を端末側に、そしてネットの情報として取り込むことができる。“タッチ”を起点として、目的のサイトや実社会上の店舗などに誘導することが可能になる。IC CARD WORLD 2011でも、「測定結果をネットで閲覧・分析できる体重計」「大画面表示した情報をモバイル機器に転送できるテレビ」など様々な提案が相次いだ(写真2)。

 ただし、モバイル端末を媒介としたリアルとネットの連携は、日本で決済機能付きの携帯電話「おサイフケータイ」が登場した2004年から存在していたもの。このタイミングで特集記事として紹介するのは、ここにきて、急成長するスマートフォンにも同様の機能が搭載され、FeliCaおよびNFC関連アプリを大きく広げようという動きがあるからだ(表1)。

表1●過去半年のNFCを巡る主な動き
2010年11月米AT&Tモビリティ、米ベライゾン・ワイヤレス、米T-モバイル USAが、NFCを利用したモバイルコマース事業のための合弁会社「Isis」の設立を発表
2010年11月NTTドコモが、おサイフケータイを使ってNFC Type3Tagフォーマット準拠のICタグ(RFID)の情報を読み取れるようにするアプリ「iCタグリーダー」を開発
2010年12月米グーグルがNFC対応の「Android 2.3」を公開
2010年12月米グーグルがNFC搭載の「Nexus S」の発売を開始
2011年1月井上恭輔氏らがNFC機能を利用した情報交換アプリ「taglet」を開発
2011年1月あんざいゆき氏がAndroid端末のNFC機能によるICカード読み取りサービス「Suica Reader」「nanaco Reader」「Edy Reader」を開発
2011年2月ソフトバンクモバイル、オリエントコーポレーション、クレディセゾン、ジェムアルト、共同印刷、マスターカード・ワールドワイド、HTC、Trusted Logicが、NFCを用いたAndroid搭載スマートフォンによる決済サービスの実証実験開始
2011年2月ミクシィがNFCによるコンテンツ共有サービス「mixi チェック」とロケーション サービス「mixi チェックイン」を利用可能に
2011年2月NTTドコモが、携帯端末へのNFC搭載のロードマップを公開
2011年2月韓国サムスン電子がNFC搭載の「GALAXY S II」を発表
2011年2月トッパン・フォームズと日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が、NFCを使った決済プラットフォームサービス事業で協業を発表

 さらに、アプリ開発の動きはスマートフォンの広がりと共に世界規模で進行している。世界規模でたくさんの開発者がアプリ開発に取り組む結果として、これまでには無かった新しいアプリが生まれる可能性がある。

 今後数年、NFCの動きからは目が離せないが、以下では現在の関連する業界動向を整理してみよう。

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