図●3つの発注方式にはそれぞれメリットとデメリットがある
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 この3年で自動発注は普及が加速している。

 例えば、大丸ピーコック(東京・江東)は2005年8月に業界に先駆けて、陳列期間が比較的長い加工食品に絞って自動発注を導入した。NEC製のパッケージソフトでシステムを開発している。

 店舗に経験が浅い店員が増え続けている現状を勘案し、加工食品だけは売れた分を自動発注する仕組みに切り替え、店員には生鮮品などの発注業務に集中してもらうことにした。既に自動発注は現場に定着し、2007年9月には売れ行きに応じて基準在庫数を機動的に変更できる新システムに刷新した。

 同じスーパーでも、首都圏で急成長しているディスカウント店のオーケー(東京・大田)のように、人件費などの店舗運営コストを抑えることを目的に自動発注システムを積極採用する企業もある。2003年10月から現在までに生鮮品以外はすべて自動発注に切り替え、店舗業務を極力省く。

 店員に対する発注業務の教育は最低限で済むので、新店の立ち上げ時には特に威力を発揮する。オーケーは自動発注が成長の原動力と考えており、独自開発したシステムは特許を出願しているほどだ。

 オーケーが自動発注に傾斜できるのは、特売をしない代わりに毎日同じ価格で安売りする「EDLP(エブリデー・ロープライス)」を貫いているから。 EDLPなら日々の売れ行きの変動幅が小さく、発注数をシステムで予測しやすくなる。EDLPという経営方針と自動発注システムが表裏一体となって密接に絡み合っている好例といえる。

店舗の意思を尊重した「リコメンド発注」

 紹介した3社は直営店主体のビジネスを展開している。直営店は経営方針を店舗に徹底させやすいので、自動発注を導入する下地が整っている。これに対し、 FC(フランチャイズチェーン)主体の店舗展開は各店にオーナーがいるので、本部で発注数を決めてしまうわけにはいかない。

 そこで登場するのが「リコメンド発注」だ()。これは本部が計算した発注数を店舗に推奨(リコメンド)するもので、店舗で自由に変更できる。推奨値はあくまでも発注数の「目安」であって、決定する前に単品ごとに店舗で承認が必要になる。典型例はam/pmジャパン(東京・港)が2006年11月に採用したリコメンド発注システムであり、日本ユニシスのパッケージソフトで開発した。

 このシステムは、過去2カ月のトレンドや天気予報などから3日後の「来店客数」を予測し、その人数と直近1週間の販売実績から単品ごとの発注数を計算するものだ。加盟店は来店客数の予測値や単品の発注数を変更しても構わない。

 多くの店舗では重点商品の発注数には店員が目配せし、それ以外は推奨値の承認を前提に抜け漏れ無く発注数を決めている。人とシステムで労力を分担しているわけだ。来店客数の予測精度は94%と高く、リコメンド発注に慣れた店舗では2007年夏時点で日販が前年同期比で2%増加し、逆に廃棄ロスは2%減少したほどである。

セブン-イレブンは独自の「設定発注」を採用

 同じコンビニエンスストアでも、セブン-イレブン・ジャパンは2007年3月から雑貨を対象に「設定発注」と呼ぶ独自の店舗発注を取り入れている。 2008年4月初旬までに71%の店舗(約8500店)に普及した。

 設定発注とは、店舗で単品ごとの基準在庫数を設定すると、発注時点の在庫数との差と配送リードタイムからストアコンピュータが発注数を計算してくれる仕組みである。結果は売り場の携帯情報端末に表示されるので、店員は棚の在庫数を見ながら最終的に発注数を決定すればよい。

 セブン&アイ・ホールディングスのCIOに相当する佐藤政行・執行役員は「基準在庫数を決めることは、当社がこだわる単品管理や仮説検証のプロセスそのものである。そこさえ店舗が押さえていれば、その先の発注数の計算部分は自動化しても構わないと判断した」と説明する。

 設定発注は店舗発注の一部分なので、本部主導の自動発注とは根本的に異なるが、それでもセブン-イレブンが発注業務の一部を自動化したことに時代の変化を感じる。設定発注のコンセプトを打ち出したのが、店員が頭を使う仮説検証の大切さを訴え続けてきた鈴木敏文会長だというから驚きである。

 人手をかけずに発注精度を高める流通業の努力は、メーカーにもメリットが大きい。今後は自動化できるところはシステムに任せながら、互いに予測精度を上げていく協業が必要になってくる。


出典:日経情報ストラテジー 2008年7月号 pp.158-159
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。